• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ボラティリティーの低下と「円キャリー取引」

  • 本多 秀俊

バックナンバー

2007年1月31日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 近年、通貨市場で取引されるボラティリティー(変動率)の低下基調が著しい。ここでは特に円ドル相場のボラティリティー低下に注目し、その背景と要因の分析を試みたうえで、それが低金利の円を調達して他通貨の資産に投資する、いわゆる「円キャリー取引」の拡大に寄与しているとの試論を展開したい。

低下は構造的な問題

 下の図はプラザ合意が取り交わされた1985年以降の円とドルの値動きと、通貨オプション市場におけるデータ管理が整った1987年以降の円ドル相場のボラティリティーとを示したものだ。ここで言うボラティリティーとは、過去の実際の値動きを基に算出した変動率(ヒストリカルボラティリティー)ではなく、市場参加者が将来的な予測に基づき、市場で取引する予想変動率(インプライドボラティリティー)を意味する。

 プラザ合意以降急速に進んだ大円高で1985~87年の3年間の年間値幅(高値-安値)は平均で実に50円超に達した。そこまで極端ではなくても、市場最安値(80円割れ)を記録した95年から戻り高値(147円台)をつけた98年までの4年間の年間値幅の平均は23円を超える。

 だが昨年1年間の円ドル相場の値幅は、わずか11円にも満たない。ボラティリティーの低下はなぜ起こったのか。これを単純に値動きが鈍くなっただけと結論づけることはできない。そこには値動きを鈍くする構造的な要因が存在している。

 通貨市場におけるボラティリティーが、近年、低下の一途をたどる要因には、主として以下の3点が考えられる。

 (1)通貨当局と市場とのコミュニケーションの成立、(2)世界経済の均質化、(3)デリバティブ(金融派生商品)の発達と普及――である。(1)と(2)に対する説明は多言を要さないだろう。

 通貨当局者が「何を目標とし」「そのために何を目安とし」「その目安がどういう状況にあるか」といった情報を市場に対して積極的に発信するようになった結果、金融政策の透明性が高まり、予想もしなかったような政策変更がなされる可能性は格段に低くなった。また、国境を越えた交易がこれだけ盛んになると、各国の購買力や生産力が相互に与える影響は極めて緊密になり、一国の好不況がその国だけにとどまり、他国に影響を与えないような事態は、特に先進国同士の間では起こりにくくなっている。

デリバティブがもたらした構造変化

 デリバティブの発達そして普及は、(1)や(2)よりもはるかに大きなボラティリティーの低下要因と考えられるが、既に市場があまりに巨大化し過ぎてしまったため、その実態を把握するのは難しい。いささかテクニカルな領域に立ち入らざるを得ないが、大雑把に言えば、人為的思惑を排した機械的判断、長期的ヘッジ商品の普及とニーズの一括処理、そして、エキゾチック物と呼ばれる特殊なオプションが供給する巨大な評価損益のヘッジの3点にまとめることができるだろう。

 機械的判断とは、取引の執行に人為的思惑が排除されるということだ。相場には常に売り手と買い手が存在し、売り手は少しでも高い値段で売りたいし、買い手は少しでも安い値段で買いたい。双方の値段が折り合った時に取引が成立するわけだが、人間のしていることだからどうしてもそこに「思惑」という要素が入る。例えば、「125円は当面抜けないだろう」「少なくとも125円以下で買いたい」「125円が抜けたら一気に130円まで走るかもしれない」などといった思い込みだ。

 このような思惑は、値動きを増幅させる要素を相場に持ち込んでいるわけだ。しかし、そのような人為的思惑を持たない機械にとっては、125円も123円や126円となんの違いもないただの「通過点」にしか過ぎない。

 またデリバティブの発達は、向こう5年、10年といった長期の為替ヘッジを可能にした。いったん仕込めば、あとは機械が月々の決済を、向こう何年にもわたって自動的に処理してくれる。つまり、従来、売り手と買い手の時差が生み出していた為替変動も市場から除去されてしまったのだ。

 そしてエキゾチック・オプション。これは特定の商品がある一定の水準で取引されるか、取引されないかのほんのわずかな値動きの違いで、保有オプションの評価額に巨額の変動を生じさせる。ドル円相場が124円90銭であれば数億円の価値があるオプションが、125円が取引されてしまった瞬間に紙屑と化してしまうようなことは現実に日常茶飯事としてある。こうした商品を顧客向けに売却した銀行は、様々な方法でその評価損益の振れを減じる手立てを打つ。その手立てが、円ドル相場が125円に近づくことを困難にし、ボラティリティーを低下させる。

ボラティリティー低下のもたらすもの

 デリバティブの発達、普及とボラティリティー低下との関連はいまだに試論であり、そのメカニズムを完全に解明するのは非常に困難な作業と思われる。ここでは、ボラティリティーの低下が通貨市場にもたらす変化について、仮の例を用いて1つ説明しよう。

コメント5

「Money Globe ― from London(本多 秀俊)」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

人々が働きたいという会社になるには 「働きやすさ」と「働きがい」、この2つが必要だ。

川野 幸夫 ヤオコー会長