香港に住む中国人の知人から、最近、広東省珠海市の新築マンションを購入したとの話を聞いた。週末に友人に誘われて現地へ足を運び、即断したという。占有面積が広いうえに、中国ではあまり一般的ではない内装付きの物件であったことが購入の決め手になったようだ。
意外だったのは投資物件として購入したものの、必ずしも賃貸収入や転売で利益を上げることは考えていないと語ったことだ。「当面は保有しているだけでよい」と欲がない。珠海市は香港から近く週末に利用することもできるため、投資と実需を兼ねた一石二鳥の物件という。
資産運用で積極的なリスクテークを好まない知人にとって、中国の不動産は比較的安全な投資先という。香港ドル預金を人民元に両替して現金で購入したが、今回のマンション購入は、「ローリスク・ローリターン」の預金から、「ミドルリスク・ミドルリターン」の不動産へ投資先を変更した、という感覚のようだ。
不動産が比較的安全な投資先という認識は、1990年代のバブル崩壊の記憶がいまだ覚めやらない日本人には違和感があるかもしれない。まして、中国では政府が不動産バブルへの警戒感を強めており、現時点で不動産に投資することは「ハイリスク」と捉える人も多いであろう。
知人が不動産を比較的安全な投資先と考える理由は明快である。それは人民元・不動産価格ともに中期的な上昇が期待できるという点である。どちらも大幅な上昇は期待しにくいが、逆に大幅に下落することも考えにくいという。
目下のところ、人民元は緩やかな上昇が持続、また、不動産は政府がバブル崩壊を誘発するような政策は採らない、という見方がコンセンサスになっていることを考えると、こうした見方は確かに一理ある。知人にとって、不動産は元本割れリスクが小さく、適度なリターンが得られる預金の延長線上の商品として映るようだ。
香港の人民元預金残高に見る「元高期待」の変化
この話を聞いて、「緩やかな人民元高の期待」が投資行動に予想以上に大きな影響を与えているのではないかと考えるようになった。一般に元高が進行すると見れば、元建て資産を保有するインセンティブが強まる。しかし、人民元の年間上昇率が最大5%程度というコンセンサスの下では、投資妙味が大きいとは言い難い。
実際、こうした見方は香港の人民元預金残高の推移に反映されている。2005年7月の人民元改革以前は、元高期待の高まりから人民元預金の残高が急増した。しかし、実際に人民元が上昇を開始すると増勢が鈍化、その後、残高は横ばい圏で推移している。
これは人民元の上昇率が年間5%程度にとどまるのであれば、人民元金利が香港ドル金利より2%程度低いことを考慮すると、積極的に人民元預金を増やす妙味が乏しいとの見方があるためであろう。
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