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“先物”は異常気象を救えるか

排出権取引市場が開く温暖化防止のドア

  • 宿輪 純一

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2007年3月1日(木)

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 「不都合な真実」をもうご覧になっただろうか。米クリントン政権時の副大統領だったアル・ゴア氏が作った映画だ。先日発表された2007年の米アカデミー賞ではドキュメンタリー賞を獲得した。

 この映画の主題は地球温暖化。温暖化と二酸化炭素の関係や、雪・氷河・氷山の消滅、湖・地下水の枯渇といった自然界の脅威、具体的な省エネの方法などを分かりやすく解説している良質のドキュメンタリーだ。この冬も暖冬だっただけに、温暖化の脅威を身近に受け取った方も少なくないのではないか。東京都心では、結局雪が降らずじまいになりそうだし、花粉もいつもより早く飛び始めている。日本だけではない。世界気象機関(WMO)によれば、2006年は1861年以降で6番目に暖かい年だったという。この数年、米国や日本を襲っている巨大な台風や、欧州を襲った干ばつのような異常気象も頻発している。

 私が映画のプロモーションを兼ねて来日したゴア氏に会った時、私の質問に対して彼が強く語ったのは2005年2月に発効した地球環境問題に関する国際条約「京都議定書」、そしてその中で定められた「排出権取引」の枠組みの重要性だった。

 京都議定書や排出権取引といった言葉は、地球温暖化の問題が世界的に叫ばれる中、メディアをにぎわしているから、耳にした読者は多いだろう。今回の宿輪ゼミは、金融や企業経営の視点から、排出権取引市場を軸に“逆張り”の経済論を展開したい。

欧州を中心に盛り上がる排出権取引市場とは

 では、ゴア氏が強調した「排出権取引」とは何か。まずは、フラッシュ動画を見てほしい。

 さて、お分かりになっただろうか。排出権取引とは、二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出権枠を売買できる制度だ。一般には、排出権枠は政府などの規制で削減目標として企業に割り当てられる。省エネ活動や新技術の開発といった企業努力で枠を下回る排出量を実現できた場合は、余った枠をほかの企業に売ることができる。

 フラッシュ動画にも登場したように排出権取引市場は、既に欧州では2005年1月にスタートした。オランダのアムステルダムにある欧州気候取引所(ECX)、英国のロンドン国際石油取引所(IPE)などで排出権先物やスポット取引が上場され、排出権の売買が動き始めている。京都議定書を批准していない米国でも、先物取引のメッカ、シカゴにあるシカゴ気候取引所(CCX)で市場取引が始まった。

 取引に参加しているのは、一般企業をはじめ、金融機関や投資家など。一般的な商品取引所や先物取引所と同じである。ECXでは、2006年の総取引量が前年比でほぼ5倍の4億5000万トンになったという。単純計算すれば、1日当たり180万トン前後が取引されたことになる。世界における取引所での取引額は、2006年に前年比約3倍の250億ドルになったとする報道もあった。

 排出権取引は、大口の需要がある企業だけでなく、金融機関などの投資家も引き付け、“金融商品”として認知されつつある。排出権価格の変動が金融業界で話題になるほどの盛り上がりなのだ。

環境立国? ―― “お寒い”日本の現状

 さて、それでは京都議定書を世界に発信した日本の現状はどうか。今のところ、排出権取引自体には総論賛成でも、取引市場を国内に設置することには二の足を踏んでいて、盛り上がりに欠けていると言わざるを得ない。

 もちろん、今や環境対策は、CSR(企業の社会的責任)を重視する企業の大きな命題になっているから、各企業は自主目標を設定して温暖化ガスの削減に取り組んでいる。企業間や海外の市場を利用して排出権取引を実施している企業もある。環境省は、自主参加型の排出量取引制度を試行しており、業界大手の約70社がメンバーになっている。ここにきて、排出権取引市場の設立についての報道も見られるようになった。

 だが、日本経団連は「現在は課題が多いので、カーボンマーケット(排出権取引市場)に過度に期待すべきではない」というスタンスである。その理由は、排出権取引市場が政府などによる排出量枠の規制を前提にしているからだ。実際、欧州連合では、取引市場の設立に当たって、2005年に世界で初めて域内の主要企業にCO2の排出枠を課した。政府による産業界への温暖化ガスの上限規制が今のところない日本では、企業サイドとしてみれば、排出量枠の設定が企業活動の規制につながり、悪影響が大きいと懸念する声が強いのだ。

 でも、本当にそうだろうか。先日、鉄鋼業界や電力業界は、「京都議定書」で日本に課せられた削減目標を達成するために、環境省や経済産業省の合同部会で排出権を海外で大量取得する方針を発表した。これは、既に実質的に規制を受けているに近い。世の中では、政府による様々な規制が緩和される方向にあるけれど、排出権取引については、きちんと規制を設けて市場取引を始めた方が、逆に企業サイドにメリットが大きいと考えている。これが、今回の“逆張り”だ。

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