「実質実効為替レートで見ると、プラザ合意以来の円安水準にある」――。
昨今、よく耳にする表現である。2月9日からドイツのエッセンで開催されたG7(7カ国)財務相・中央銀行総裁会議の前後にも、欧州大陸の各国から盛んに円安牽制の発言が聞かれた。背景には、こうした「歴史的な円安」という認識があったのだろう。
だがこの認識には、違和感を抱かずにいられない。というのも1985年のプラザ合意当時と言えば、円は対ドルで1ドル=250円近辺を推移していたからだ。足元、120円前後を行ったり来たりしているこの円相場が、当時よりも円安というのでは、どうにも腑に落ちない。
マルク横ばい、フランやリラでは円高
試みに、ドルのほかに、今回、円安牽制の筆頭に立ったドイツ、フランス、イタリアの各通貨について対円での相場推移を振り返ってみたのが下の図だ。独マルクに対して円がほぼ当時の水準で推移しているほか、仏フランに対しては当時よりもわずかに円「高」、伊リラに至ってはいまだに50%以上も円「高」水準にある事実を確認することができる。
もちろんこうした議論は、「基点」をどこに置くかで大きく変わってきてしまう。例えば、95年の大幅な円高当時の水準や、2000年の大幅なユーロ安(独マルクも仏フランも伊リラも1999年1月以降ユーロに統合されてしまい、現在は存在しない)当時の水準と比較すれば、現行水準が「円安」であることに議論を差し挟む余地はないのかもしれない。
しかし、お互いが最も自国通貨が弱かった時の水準を持ち出して、「あの時よりも通貨安だ」という牽制を繰り返しても、それは無意味ではなかろうか。 いずれにしても、この「プラザ合意以来の…」という視点には納得がいかない。
そこで、この「実質実効為替レート」なるものが一体何なのか、一から検証し直してみることにしよう。
名目実効為替レートは、たしかに大幅な円高だが…
まず、実効為替レートの「実効」という部分は、日本の貿易相手国・地域のうち主要なものに対し、その通貨変動を、貿易量に応じて加重平均することを意味する。それを指数化したものが「名目実効為替レート」と呼ばれる。日本との貿易が盛んな国の通貨に対する変動がより大きく反映される仕組みだが、一貫して最大のシェアを誇るのは言わずと知れた米国で、現在その比率は33%を超える。
ここでもまた、「おや」と思う。上のグラフで確認できる通り、現在、円は対ドルで、1985年当時と比べて100%以上も円「高」の水準にある。そのドルが全体の3分の1を占めているというのに、何で円「安」なのだろう。ほかに、よほど極端に円「安」に振れている通貨でもあるのだろうか。
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1964年静岡県浜松市生まれ。1989年東京大学教育学部卒業。1989年、ミッドランド銀行(現HSBC銀行)東京支店入行。1992年フランス・インドスエズ銀行(現カリヨン銀行)東京支店入行。1996年同行ロンドン支店配属。2000年、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)ロンドン支店入行。為替スポットディーラー、通貨オプションディーラー、セールスディーラーなど一貫して為替市場に従事、2003年から現職。







