「石川 宏の「鳥瞰!日本の競争力」」

トヨタ、キヤノン、新日鉄に見る円高対応力

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2007年3月15日(木)

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 為替市場で2月下旬から3月初めにかけて円が急騰、株式市場では輸出企業の業績悪化と景気への影響懸念が一気に吹き上がった。3月5日までの僅か1週間で、円の対ドル相場は121円37銭から115円33銭へ6円、率で5.0%の円高となり、日経平均株価は同様に1万8215円から1万6642円へと1573円、8.6%の下落となった。

強くなった円高対応力

 ここで指摘したいのは、円高に対する株式市場の反応は行き過ぎだったのではないか、という点である。確かに、円高となれば輸出企業にとっては円換算した輸出代金が減少し、その分利益も減る。

 しかし、事は単純ではない。まず、足元は為替予約がほぼ完了しているので今回の円高の影響はほとんどない。2007年3月期業績は、むしろ従来予想を上回る公算が大きい。2007年4〜6月期分も既に予約がかなり進んでいるようだ。

 もっと大事なことは、基本的に企業の円高対応力が年々強化されていることだ。

 経済産業省の「海外事業活動基本調査」(2005年7月調査)によれば、製造業の海外生産比率は、1995年度19.7%、2000年度24.2%、2005年度31.2%と上昇、その間現地法人の経常利益も増え、経常利益率も同期間に3.1%、3.7%、4.9%(2004年度)と向上している。また、直近の売り上げの海外に対する依存度は約50%に達している。

 海外依存度が高まっているということは、企業業績が為替の動きに左右されやすくなっているとの指摘もできる。しかしだからこそ企業は為替変動対策の強化により努めているとも言える。

 そこで、企業が為替変動をいかに制御しているか、またその制御力を支える企業基盤をいかに強化して国際的に新たな成長の道を歩み出したか、それぞれの代表的企業としてトヨタ自動車(7203)、キヤノン(7751)と新日本製鉄(5401)を以下紹介したい。

コスト削減と新技術・新商品開発力が決め手

 トヨタ、キヤノン両社に共通しているのは、技術を駆使して顧客ニーズをしっかり捉えた製品を開発、販売していることと、徹底的にコストダウンを推進していることだ。トヨタは、SUV(多目的スポーツ車)や省エネ、環境、カーエレクトロニクス化など、顧客や社会ニーズに応える車の開発に注力している。キヤノンはデジタルカメラ、カラー複写機、カラーレーザービームプリンターなど独自技術で同業他社と差別化した新製品を相次いで開発、業績牽引に成功している。

 両社はコスト引き下げも徹底している。単なる購入原材料や部品の値下げだけではない。設計や物流コストの引き下げ等を含めて生産性の向上を図っている。

 原価改善の効果は、トヨタの場合、2001年3月期から2006年3月期までの6年間累計で1兆2700億円、2007年3月期予想まで含めると1兆3500億円に達する。同期間の為替差損益累計が2006年3月期までで3200億円、2007年3月期まででは同5200億円の差益(予想)なので、利益貢献は為替差益よりも原価改善効果の方が遥かに大きい。

 原価改善の営業利益増加への寄与率は2006年3月期まででは115%、2007年3月期まででは92%に及ぶ。足元で仮に1ドル110円になった場合、円高による減益額は営業利益全体の約2%、105円では同4%と試算されている。この程度の円高なら、原価改善などで十分吸収できる範囲だ。

 キヤノンも同様だ。

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著者プロフィール

石川 宏(いしかわ・ひろし)
石川証券投資研究所代表
(証券経済アナリスト)

石川 宏

1940年東京生まれ。63年早稲田大学商学部卒業後、日興証券(現日興コーディアル証券)入社、調査部勤務。日興リサーチセンター企画調査部長、同社ロンドン駐在員事務所長、日興証券情報部長、東京証券総合研究所常務、東海東京証券及び東海東京調査センター顧問・首席アナリストを経て、2003年に独立、現職。
(写真:川口 愛)



このコラムについて

石川 宏の「鳥瞰!日本の競争力」

日本の実力はいかばりか。証券アナリストとして豊富な経験を持つ筆者が地道に足で稼いだ情報と、長年蓄積してきたデータ分析の手法をもとに、日本の秘めた競争力、そして改善点はどこにあるのかを提示していく。

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