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環境保護団体と手打ちをする投資ファンド

これが本当の「グリーン・メーラー」?
日本ビクター買収に名乗りを上げるファンドの実態

2007年3月27日(火)

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 3月16日、松下電器産業(6752)は、保有する日本ビクター(6792)の株式を米投資ファンドTPG(旧テキサス・パシフィック・グループ)に売却する方向で最終調整に入ったと報道された。

 業界では何年も前から噂されていた案件であり、「ようやく動いたか」というのが正直な感想である。もっとも、業績が好調である総合電機メーカーが非中核事業を整理すべく、老舗のブランドを持つ子会社を、オークション方式で最高値で入札した外資系ファンドへ売却することを決断した点は、米国的な資本主義システムに近づいていく新しい潮流を象徴するものとして、意義深い。

 TPGにとっては、今月6日に発表された玩具メーカー・タカラトミー(7867)への資本参加に続く国内投資案件であり、わが国での存在感を高めつつあるが、同社は今年に入ってから、本国である米国でも大きく注目を浴びている。

「バイアウト業界のグーグル」

 TPGは米国で5本の指に入る大手バイアウトファンドであり、業界内での評判は高い。バイアウトファンドは、投資家から集めた資金を企業に投資し、投資先企業の経営に関与して企業価値の向上を図った後に、売却して利回りを得ることを目的とするファンド。みずから経営へ積極的に関与する点において、より受動的な株主として値上がりを待つヘッジファンドなどとは異なる。

 そのバイアウトファンドの中で、TPGは、ユニークな個性を放つ存在である。多くのバイアウトファンドがニューヨークを中心に東海岸に本拠を構えるのに対し、TPGはその名が示すとおり、テキサスで設立され、シリコンバレーから北へ35マイル、サンフランシスコ市内に本社がある。設立は1993年。ライバルのKKRが76年、ブラックストーン・グループ、カーライル・グループ、ベイン・キャピタルらが80年代半ばだったことと比べると、かなり後発である。

 大手ファンドの中では先駆けてベンチャー・キャピタル・ファンド(TPGベンチャーズ)を設立し、果敢にテクノロジー企業への投資を推進していったほか、1995年に早くも合弁でアジア市場を対象とするバイアウトファンド(ニューブリッジ・キャピタル)を立ち上げていたり、ゴールドマン出身の凄腕ファンドマネジャーと組んでヘッジファンド(TPGアクソン)を設立するなど、斬新な取り組みをしてきた。2004年、中国のレノボがIBMからノートPC部門を買収した際、米国側の共同投資家として選ばれたのも、TPGだった。

 最近では、その名を知られるようになったTPGも、1980年代のRJRナビスコ買収劇で「野蛮な来訪者」として有名になったコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)や、911(米同時多発テロ)以降にブッシュ家や中東マネーとの親密さが取り沙汰されたカーライル・グループ(参照記事)などと比べると、これまで一般の間では知名度は高くなかった。新興のTPGは、保守的であることを美徳とするウォール街では革新的な存在であり、業界関係者をして、「KKRが(バイアウト業界の)GE(ゼネラル・エレクトリック)だとすれば、TPGはグーグルである」と言わしめたこともある。

創業者はハーバード・ロースクール卒の弁護士

 TPGのユニークさは、創業者のデイビッド・ボンダーマン氏がもたらしているかもしれない。ボンダーマン氏はハーバード・ロースクール卒の弁護士。ここまではありきたりかもしれないが、同氏はカイロ大学でアラビア語を専攻し、複数の言語に堪能で、人権問題から倒産案件まで幅広く経験し、歴史構造物保護訴訟で活躍した。この歴史構造物保護訴訟の活躍でテキサスの石油王であるバス一族のロバート・バス氏の目に留まり、彼の資金を運用する投資責任者に招聘された。

 バス氏の元で10年近く投資業務に携わったのち、1992年に破綻したコンチネンタル航空の買収に名乗りを上げて、翌年独立してTPGを正式に旗揚げした。コンチネンタル航空の案件は複雑さゆえ多くのファンドが避けた難物だったが、ボンダーマン氏は投資元本の10倍を回収する大成功を収め、名を馳せた。

 その後、フルーツ缶詰大手のデルモンテ・フーズ、衣料品のジェイ・クルー、高級バイクの伊ドゥカティ・モーター、ハンバーガーチェーンのバーガー・キング、映画会社のMGM(ソニーと共同投資)などへの投資経験を持つ。そして、フィナンシャル・タイムズ紙が入手した資料によると、これまで67社へ72億ドルを投資し、201億ドルの利益を上げてきた投資実績を持つという(参照記事)。さらに、同社は前述のニューブリッジ・キャピタルを通じて、中国や韓国でも既に40億ドル(4720億円、1ドル=118円換算。以下同じ)を超える規模の投資実績を持つ。

「グリーン・バイアウト」が成立するまで

 人権問題を扱う弁護士が創業者、他のファンドと比べて後発、など何かと異色さが目立つTPGがその特色をいかんなく発揮したのが、今年2月26日に明らかにした案件だ。TPGはKKRやゴールドマン・サックスを中心とする投資家グループと組んで、テキサス州電力最大手であるTXUを450億ドル(約5兆3000億円)で買収すると発表した。

 本件はバイアウト史上最高額となる取引総額の大きさもさることながら、TXUに対して反対運動を展開していた環境保護団体が、本件の成立に重要な役割を担ったことが注目された。買収ファンドと環境保護団体という、一見かけ離れた世界に住む両者が、5兆円を超える案件の交渉のテーブルに着いていたというミスマッチが世の関心を引いたのだ。

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「環境保護団体と手打ちをする投資ファンド」の著者

岩瀬 大輔

岩瀬 大輔(いわせ・だいすけ)

ライフネット生命保険社長兼COO

1976年埼玉県生まれ。98年に東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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社長に就任してずっと言っているのが ファンダメンタルズの強化。

安形 哲夫 ジェイテクト社長