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第2回「それは企業価値じゃなく“企業時価”」

  • 板倉 雄一郎

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2007年4月2日(月)

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 「株式」とはそもそも何でしょうか。

 「株式」には、さまざまな権利が付随しています。利益配当請求権や、残余財産請求権、何よりも株式会社における最高決議機関である株主総会の議決権といった権利です。「株式」を購入して保有する行為は、実はこうした権利を保有する行為にほかなりません。

 そして権利にはなにがしかの価値が存在します。ですから、株式を保有している人間は、その株式を発行している企業に対する種々の権利、すなわち利益配当請求権、残余財産請求権、株主総会議決権などによって裏打ちされた価値を獲得するわけです。

 株式を保有することで得られる権利について、もう少し詳しく見ていきましょう。

「フリーキャッシュフロー」の使い道を決める

 株式会社が生み出すキャッシュフローのうち、本業から得られたキャッシュフローから、将来の成長のための投資に使ったキャッシュフローを差し引いたものを、通常「フリーキャッシュフロー」と呼びます。

 私たち板倉雄一郎事務所は、この「フリーキャッシュフロー」を「投資家に帰属するキャッシュフロー」と呼んでいます。そして投資家は、この「投資家に帰属するキャッシュフロー」を会社がどう使うかについて意思決定の権利を持っているわけです。

 権利上、株主は会社に対し、自らに配当として還流させることもできますし、将来のキャッシュフロー成長のための再投資に回させることもできます。もちろん、これは「原則として」という話です。実際の会社経営において、株主の好き放題に何でも決めていい、となってしまったら、その会社の経営は早晩行き詰まってしまうでしょう。

 ともあれ、株式を保有するということは、そんな権利を有しているということなのです。

1株買うのも、全株買うのも意味は同じ、その理由は?

 次に――。株式会社における「株」は、通常、細かく分割されています。

 これは、株を細かく分割することで売り買いされる際の単位価格を下げ、株の流動性をある程度高めよう、という考えがあるからです。1株当たりの価格が安ければ、よりたくさんの人がその株を買ったり売ったりすることができる。すなわち「株の流動性が高くなる」わけです。

板倉雄一郎事務所代表 板倉 雄一郎氏 (写真:大槻 純一)

板倉雄一郎事務所代表 板倉 雄一郎氏 (写真:大槻 純一)

 これがもし1つの株式会社に1株しか存在しなかったらどうでしょう。その会社の株式の売買は常に会社全体をまるごと売買するのと同じになります。当然ものすごい値段でしょう。既存の株主が「株式を売りたい」と思っても、買い手はなかなか見つかりません。一般庶民にはとても手が出ない。そんな高額の株式の売買に参加できるのはごくごく一握りの富豪や法人のみ。極めて流動性の低い取引になってしまいます。

 これでは、会社にとっても投資してもらう機会を多数損失してしまい、株式市場での成長も見込めなくなります。というわけで、売買がより容易に行えるよう、株式は細かく切り刻まれています。

 ただし――。全体を100に切り刻んだうちの1株だけを買うのであっても、全体を1万に切り刻んだうちの1株だけを買うのであっても、本質的には、その企業全体を1株で購入する(すなわち丸ごと買ってしまう)行為と、株主にとっての意味合いに違いはありません。ですから、「100分の1」株であれ、「1万分の1」株であれ、その企業全体としての価値が価格に対して高く、かつ時間経過とともにその価値が増加する、と判断できない場合は、その株式を買うべきではないのです。

 企業同士の大型M&A(企業の合併・買収)案件であれ、個人投資家が1株だけ投資する株式投資であれ、その間に本質的な違いはありません。規模の違いこそあれ、どちらも、キャッシュ(または、株式交換の場合には株式)を差し出す代わりに、投資対象企業の「株式」を取得する、という行為なのです。株式を取得する行為における合理性は、取得する株式の「価値」が、「価格」を上回っているという判断ができる時のみ存在します。規模の大小や、案件の派手さに惑わされないようにしていただきたいと思います。

株式分割は、「細かくしてください」と一緒

 また、「株式分割」は、「両替」に過ぎないという点についても、強調しておきたいと思います。

 そもそも株式は、流動性をある程度高めるために、1社=1株ではなく、細かく分割されています。「株式分割」は、さらに流動性を高めるために、これをさらに小分けしようという行為に過ぎません。

 たとえば、株主価値1万円の企業の株を、1000円札10枚で取引していたとします。これを、より多くの人が取引に参加できるように、100円玉100枚に分割するようなものです。1000円札10枚であれ、100円玉100枚であれ、株主価値が1万円であることに変わりはありません。

 株式とはそもそも何であるのか、を考えると、M&Aも、1株投資も、株式分割も、シンプルに考えることができるようになるのです。

「時価総額経営」という言葉のウソ

 企業の株式の持つ価値の合計のことを、「株主価値」と言います。

 株式が売買される時の価格のことを、「株価」と言います。株価は、短期的な需給のバランスで上下に動くことがあります。急に人気が上がれば、株価は上がりますし、短期間でその企業の先行きに悲観的な人が増えれば、株価は下がります。

 株価は、1株当たりの価格のことを指しますが、それをすべて合計したものが「株式時価総額」と呼ばれるものです(いやむしろ、企業の株の値段である株式時価総額を細かく切り刻んだものが、「株価」だ、と言ったほうがいいかもしれません)。

 ところが、「時価総額経営」などと呼ばれるわけの分からない経営方針を打ち出す経営者が稀にいます。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官