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第5回「投資とは、タイムマシンで未来へ飛ぶこと」

  • 板倉 雄一郎

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2007年4月23日(月)

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 デイトレードから得る利益には、長期継続性がないと前回までで申し上げました。これは、なぜでしょうか?

 お金というのは、どこかから湧き出してくるのではありません。お金が増える方法は、3つしかありません。

 1つ目は、自分から社会に役立つ価値を生み出すことです。顧客が喜ぶような、いくらかのお金を払って、それ以上の価値を手に入れた、と思ってもらえるようなものを生み出すことです。これが最も真っ当な方法です。

 2つ目の方法は、裁定(arbitrage:さや抜き)取引です。全く同じみかんが、江戸では100円で売っていて、紀州では50円で売っている。これはいずれ均衡していく。この場合、紀州で、大量のみかんを50円で買い付け、江戸で100円で売って、50円の「さや」を抜く。これが、裁定取引です。

 3つ目はかっぱらい、人から奪ってくることです。つまり犯罪です。

 合法的には、価値を生み出すか、さや抜きをするか、2つの方法しかありません。
 そしてデイトレードは、徹底的にさや抜きを狙う手法です。

 たとえばデイトレードで1日に30%もうけた人がいます。100万円を動かして、130万円になった。これはもちろんあり得ないことではありません。

 しかし、投資対象企業が、たった1日で30%の利回りを生むことはあり得ません。ということは、その儲け部分はほかの誰かの損失が集まって生まれた利益、ということになります。まさにゼロサムゲームです。

 このように、誰かの犠牲の上に成り立つさや抜きの手法は、繰り返していくうちに、やがて有効性を失っていきます。手法が伝播すれば、有効性はなくなりますし、奪われるばかりの人がいつまでのその場に留まっていてくれるはずがありません。長期的に継続しようがないのです。

即時勝負の裁定取引は、価値を生まない

 裁定取引は、本質的に、それ自体が「価値を生む」ものではありません。
 上記の例でいえば、江戸と紀州、2ヵ所でのみかんの価格を均衡させるという役割は果たしますが、そのアービトラージを通じて何らかの価値を「創出」したわけではないのです。単にその瞬間、その瞬間の価格の差異を利用して、利ざやを抜いただけなのです。

 「価値」は、短い時間で生み出されるわけではありません。ある程度の時間をかけて生み出されるものです。そうである以上、投資が価値創造に貢献する場合もまた、ある程度の時間をかけた投資だけなのです。

板倉雄一郎事務所代表 板倉 雄一郎氏 (写真:大槻 純一)

板倉雄一郎事務所代表 板倉 雄一郎氏 (写真:大槻 純一)

 この世の中に存在するあらゆる価値は、時間とともに作り出されます。

 たとえ見た目は一瞬で生み出されたかのように見える価値であっても、実際はその裏側にある長い時間によって作り出されているのです。たとえ、一瞬で生まれたように見える素晴らしく革新的なアイデアであっても、実際にそれをかたちにし「価値」を生み出していくためには、やはり長い時間が必要なのです。

 価値創造には、時間がかかるのです。当然のことながら、企業の価値創造もやはり、時間がかかるのです。

 製薬メーカーが新薬を開発するためには、新規物質の探索からスタートし、前臨床試験、第I相(フェーズ1)、第II相(フェーズ2)、第III相(フェーズ3)の各臨床試験、を経て、実際に製品が上市されるまでに十数年もの期間を費やしています。さらに、市場に出された製品をキャッシュに転換していくためには、多くのMRが病院を駆け回って製品を浸透させていく時間が必要です。

 トヨタ自動車(7203)が、新入社員をカイゼンの精神を叩き込まれた一人前のトヨタマンを育てるまでには、何年も何年もの時間を費やしているのです。そしてそのトヨタマンが、それぞれの役割を分担して世界を席巻する自動車を開発し、製造し、販売するまでには膨大な時間がかかるのです。

 繰り返します。
 短期間に価値が生み出されるわけではありません。あらゆる価値創造は、時間とともに作り出されるものなのです。

投資の見返りにも当然時間がかかる

 以上のように、価値創造には、時間がかかります。ということは、価値創造の結果生み出された果実を享受するまでには、やはり時間がかかるということです。

 自分が投資した企業に、価値創造の果実が実るのを待てない人は、小さな果実のままに売買を繰り返していかなくてはなりません。そして他から果実を奪ってくることを考えなければなりません。

 せっかく時が果実を実らせてくれようとしているにもかかわらず、時を敵にまわしているようなものです。

 価値創造は、ゆっくりと、確実に行われるものです。ゆっくりと、しかし確実に時間をかけた価値創造は、時間をかけるほどに大きな果実をもたらしてくれます。

 こうした意見に対し、
「ゆっくりと確実に株式投資からの果実を得るつもりであっても、時間をかけたからといって株価が上がる保証はどこにもないではないか?」
 といった反論があるかもしれません。
「時間をかけるほど株価が下がる企業もあるではないか?」
 といった意見が出るかもしれません。

 しかし、投資対象企業が「価値を生み出している状態にあるかどうか」を見極める力さえあれば、心配することはありません。価格は価値の周囲で動くようになり、ゆっくりと、しかし確実に果実を得ることが可能となるはずです。

投資というタイムマシン

 本来、投資とは、今を生きながら「未来」を思うことです。
 将来生まれるかもしれない不確実な利益のために、今手元にある確実な何かを差し出す。それが投資本来の意味です。

 投資の意思決定において、私たちは必ず未来のことを考えています。どういった未来が起こりうるのか、それを想像しつつ投資しているはずです。

 未来に思いを馳せることのない投資は、極めて危険です。近視眼的に今だけを見て行う投資は、リスクもリターンも考慮の外においたギャンブルに他なりません。

 投資とギャンブルの違いは、「未来を思う」という行動がそこに含まれているかどうかにあるのです。

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