「Money Globe- from NY(安井 明彦)」

Money Globe- from NY(安井 明彦)

2007年4月27日(金)

米国サービス分野はなぜ強いのか

実はアウトソーシングでなく、インソーシング大国

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 1990年代に加速的な広がりを見せた経済のグローバル化、サービス化の波に乗り、米国企業はサービス分野を中心に世界市場においてその存在感を大いに高めてきた。他方、日本は自動車をはじめ一部の製造業においては高い技術を有し存在感を示してはいるものの、サービス分野においてはその存在感は依然小さく、グローバル市場における競争力は欧米企業に大きく劣っている。

 米国のサービス分野の強さの背後には大きく2つの要因があると思われる。第1に、巷間指摘されることだが、IT(情報技術)活用によるビジネスプロセス効率化などを通じた生産性向上だ。そして第2に、サービス経済のグローバル化を主導しつつ、そのグローバル化の果実を自国のサービス分野が享受できる構図を確立したことだ。

米国の生産性向上はサービス分野が支えている

 まず、サービス分野の生産性についてだが、米ブルッキングス研究所のB.ボスワース氏らの研究によれば、1990年代後半の米国の労働生産性上昇の多くは、IT関連財を生産する製造業ではなく、むしろITを活用する側にあるサービス分野によってもたらされたことが示されている。とりわけ小売業やヘルスケア関連、さらに企業向け専門サービス業などの生産性上昇率の加速が顕著だった。個別事例としてもウォルマート・ストアーズによるIT活用などは広く知られている。

 また、IMF(国際通貨基金)の研究者であるT.バヨウミ、M.ハッカーの両氏の分析では、国レベルの生産性上昇率を比較した場合に、IT関連財の「生産」よりもIT投資などITへの「支出」が多い国、つまり「IT活用国」の方が、総じて高い生産性上昇率を見せる傾向があることが確認されている。

 さらに両氏の分析を踏まえて、米ピーターソン国際経済研究所のC.マン研究員は、IT技術の広まりが世界中で共通して見られた現象であったにもかかわらず、その中で米国が抜きん出た生産性上昇率の高さを見せた理由の1つとして、ITユーザーであるサービス分野の企業が、ITを有効活用することでITの潜在力を引き出すことに成功した点にあるのではないかと指摘した。また、同様にIT活用による生産性上昇効果が顕著に見られた国としてオーストラリアを紹介している。

 こうしたITの効率的な活用による生産性上昇率への影響については、生産性の日米比較を行った元橋一之東京大学大学院教授らの研究においても指摘され、90年代後半以降、日本に比べ米国の方がIT利用セクターによる生産性上昇への寄与がはるかに大きかったことが示されている。

海外へのアウトソーシングは国内の20分の1程度

 次に、グローバル化の恩恵についてだが、1990年代は財貿易のみならずサービス取引においても加速的にグローバル化が進んだ時期だった。そうした中で、米国企業は自ら積極的な海外展開を進めグローバル化の流れを主導すると同時に、アウトソーシングを積極的に推し進めることで収益力や生産性を高めてきた。

 もっとも米国企業のアウトソーシング活用に関して言うと、一般にはインドにおけるコールセンター運営やソフトウエア開発など、海外へのアウトソーシング(オフショアリング)が話題になることが多いが、実のところ米企業のアウトソーシング全体に占めるオフショアリングの割合はごくわずかなものに過ぎない。

 全米行政アカデミーの調査報告によると、米企業によるサービス業務のアウトソーシングの大半は米国内にある他の企業へのものであり、オフショアリングは国内アウトソーシングの20分の1程度に過ぎないとされている。例えばコールセンターで言えば、インドよりもむしろユタ州など国内の低コスト地域へのアウトソーシングの方が規模的にははるかに大きい。

 むしろ注目すべきは、米国が海外へのアウトソーシングの発注主体にとどまらず、逆に海外からのアウトソーシングの「受け皿」としても大きな存在感を示しているということだ。

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著者プロフィール

矢野 和彦(やの・かずひこ)
みずほ総合研究所 調査本部 ニューヨーク事務所長

矢野 和彦 1964年大分県生まれ。87年一橋大学経済学部卒業、大分銀行入行。94年米国オレゴン大学大学院留学。96年同大学院経済学修士取得、富士総合研究所入社。同経済調査部、ニューヨーク事務所長などを経て、2004年より現職。著書に『ベーシックアメリカ経済』(共著、日経文庫)など。論文に『米国住宅ブームの帰結をどう読むか』(みずほ総研論集・2005年1号)など

(写真:丸本 孝彦)


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