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第12章 コールオプション(2)

2007年5月7日(月)

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 2月のテヘランは冬の真っ只中である。

 朝方の気温は零下6~7度まで下がり、雪が街を真っ白に染める日も少なくない。

 2004年2月18日水曜日――

 夜、テヘラン市内にあるNIOC(イラン国営石油会社)の迎賓館の一室に、スーツ姿のイラン人と日本人が集まっていた。

 シャンデリアの光と報道関係者のカメラのフラッシュを浴びながら、イラン・日本両国の小旗と色とりどりの花々が賑々(にぎにぎ)しく飾られたテーブルで、イラン石油省次官でNIOC総裁を務めるセイエド・メフディ・ミルモエジと、老眼鏡をかけた経済産業省系石油開発会社の日本人社長が並んで、厚さ3センチほどの契約書に署名していた。

 背後に立った、ザンガネ石油相やアリ・マジェディ駐日イラン大使らがその様子を見守り、彼らの後ろの壁には、ホメイニ師、モンタゼリ師、ハメネイ師の写真が金色の額縁に入れられて飾られていた。

 日本が優先交渉権を獲得して以来、3年余りのマラソン交渉が続いてきた巨大油田の開発契約が調印された。

 一昨年(2002年)12月に交渉期限を半年間延長し、昨年6月には優先交渉権を失って、イラン側に「ロシアや中国も興味を示している」と脅されながら話し合いを続けてきた末の合意だった。

 総投資額は20億ドル(約2200億円)。経産省系石油開発会社がオペレーターとなり、75%の費用を日本側が、25%をNIOCが負担する。開発作業は調印日から2年半以内に着手しなければならず、2段階で行われる。

 第1ステージは調印日から52カ月で生産量を日量15万バレル、

 第2ステージは同8年で同26万バレルまで引き上げる。

 契約は「バイバック」と呼ばれる形態で、経産省系石油開発会社は、生産開始後の一定期間(第1ステージは6年半、第2ステージはその後の6年間)で、

(1)開発作業に投下した資金
(2)資金の金利
(3)一定率の投資利潤

を生産された原油で回収する。

 原油生産が目標に達しない場合はペナルティが科せられ、コストオーバーランも認められない厳しい契約であった。回収が終わるか回収期間が終了すると、日本側の役割は終わり、油田の操業はNIOCの手に委ねられる。経済産業省は「日の丸油田」と呼ぶが、実態は開発作業請負契約にすぎない。

 調印が終わると、鼻の下と顎に鬚をたくわえた大柄なミルモエジNIOC総裁と、石油開発会社の日本人社長が立ち上がり、拍手の中で契約書を交換した。

 「よくここまで来たという思いです。同時に、開発を成功させなくてはと、改めて気を引き締めています」

 調印後の会見で経産省系石油開発会社の社長が、詰めかけた新聞記者たちを前に、感慨深い表情をした。

 同社はトップが経済産業省からの天下りであるだけでなく、来年4月に廃止される石油公団から大量の技術者や社員を受け入れることになっている。会場には、日下一正資源エネルギー庁長官の姿もあった。

 日本の新聞記者が質問の手を挙げた。

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「第12章 コールオプション(2)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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