「岩瀬 大輔の投資ファンドは眠らない」

「子供たちの投資ファンド」の素顔

貪欲に稼ぐには理由がある

バックナンバー

2007年6月14日(木)

1/3ページ

印刷ページ

 電力卸最大手である電源開発(Jパワー)9513に130円の増配要求を提出し、6月の株主総会に向けて積極的な広報活動を展開している、英ヘッジファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」(TCI)。来日中の同社アジア代表、ジョン・ホー氏の誘いを受け、都内のホテルで朝食を共にした。筆者とホー氏は共に戦略系コンサルタント会社のボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身という共通点を持つことから、すぐに打ち解けた雰囲気で対話は進んだ。

 ホー氏は30代前半の中国系オーストラリア人。2004年にBCGからシカゴのヘッジファンド、シタデール・インベストメント・グループに移籍し、その後TCIアジア代表に就任した。金儲けの嗅覚に優れたファンドマネジャーというより、知的な議論を好むコンサルタントといった雰囲気だ。「もちろん我々が儲けることが目的だが」と正直に認めつつも、電力会社が財務戦略を見直すことが、なぜわが国の長期のエネルギー戦略、そして資本市場の発展にとって重要なのか、熱く語ってくれた。

70ページのエネルギー政策提案書

 ホー氏との朝食の席で「ご参考まで」と早々に手渡されたのが、「日本の電力セクターの長期にわたる効率的な資本構成に関する考察」と題された、70ページもの分厚い資料だった。この資料の中でTCIは、なぜJパワーをはじめとした電力会社が負債を積極的に活用していくことが国家の長期エネルギー戦略にとって不可欠であるか、説得的な議論を展開している。

 曰く、日本の電力セクターはこれまで世界でも最高水準の事業最適化を実現してきた。しかし、今後長期的なエネルギー目標を持続的に達成していくためには、オペレーションやマネジメントの最適化だけではなく、資金調達戦略の最適化も図らなければならない。求められる長期の大型投資を続けていくためには、資本コストを下げるための努力が不可欠である。そして、負債は、資本コストを下げるために積極的に活用すべき資金調達手段であり、最適な資本構成を実現するために負債を増やすことは望ましい。

 日本の電力会社各社の株主資本比率は、簿価ベースでは主に20%台だが時価ベースに修正すると40%を超えており、その安定したキャッシュフローと高い格付けを考えれば、もっと負債を活用すべきである。内部留保として積み上げた資金は、本来株主に帰属するものでって、決して安い資金調達手段ではない。むしろ高い資本コストを伴う資金であることを認識する必要がある。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント1 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

岩瀬 大輔
(いわせ・だいすけ)
ネットライフ企画 取締役副社長

岩瀬 大輔

1976年埼玉県生まれ。97年司法試験合格、98年東京大学法学部卒業、2006年ハーバード大学経営学修士(MBA with High Distinction)。ボストンコンサルティンググループ、インターネット・キャピタル・グループ、リップルウッド・ホールディングスRHJインターナショナルを経て、現職。2008年初旬の開業を目標に、新しい生命保険会社の立上げを準備中。著書に、『ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて』(11月16日刊、日経BP社、ISBN:4-822-24552-7、価格1890円)。

(写真:川口 愛)



このコラムについて

岩瀬 大輔の投資ファンドは眠らない

運用資産が1兆ドルを越えたと言われる投資ファンド。世界を駆けめぐる欧米のバイアウトファンド、ヘッジファンドなどの投資ファンドは活動の幅を広げ、日本への投資も増やしてきている。海外ファンドは何を求めているのか。その実態は。グローバルな情報網を持つ筆者が、最新動向を紹介しながらファンド資本主義の姿を描きます。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン

日経ビジネスからのご案内