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「世界的カネ余り」という謎

インフレ、貯蓄増加でないのに過剰流動性と呼ぶ背景

  • ロバート・シラー

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2007年8月7日(火)

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 現在は世界中で過剰流動性が広がり、この状況が続く限りは資産価格が上がり続けると期待できる――

 これは、最近よく耳にする意見である。しかし、ここで言う「流動性」は、何を意味しているのだろうか。そしてその流動性が、株式や不動産価格のさらなる上昇を支えると期待する合理的な理由が本当にあるのだろうか。
 
 流動資産とは、簡単に換金でき、別の資産購入に用いられるという点で、現金に似た資産である。近頃はあちこちで流動資産が余っており、これが株や土地、美術品などへの投資で競り勝つために用いられている、という考え方のようだ。

見えぬ過剰流動性の正体

 この考え方は、地球温暖化によって氷河が溶けることで、世界中の海水の高さが上昇する、とする主張と同様、ごくごく基本的なものだ。たしかに水位が上昇すれば、様々な地質学的そして経済的な変化を起こすことに関して説明はつく。しかし、金融市場での流動性拡大は同じように明白な説明がつくのか。そもそもこの仮説の正体とは。

 もともと「過剰流動性」とは、世界各国の中央銀行が金融緩和を過度に進めたため、モノは少ないのにカネばかり余るということを意味していた。それならば、カネ余りが起きれば、洋服代も散髪代もすべての価格が上昇するはずだ。1971年、米連邦準備理事会(FRB)のアーサー・バーンズ議長(当時)が、「米国は過剰流動性の状態にある」と述べた時に意味していたのはまさにこの状態だ。当時の関心事は、インフレーションだった。

 この過剰流動性という言葉は、最近では、多くの中央銀行が金融引き締め政策を取っていた2005年に使われ始めた。米国ではFRBが大幅な利上げを実施していた。2005年以降、世界の中央銀行はインフレ退治に向けて、大きな責任を持ちながら政策を断行してきた。実際、IMF(国際通貨基金)によれば2005年以降、世界の消費者物価指数は全体として低下した。2007年には上昇に転じたが、わずかなものである。

 従って、過剰流動性という言葉が2005年に頻繁に使われ始めた理由については困惑を禁じ得ない。もしかしたら、金融引き締め策に長期金利がほとんど反応しないことに関係していたのかもしれない。利上げが行われても長期金利が上がらなければ、何らかの説明が欲しくなる。「流動性」はこの現象を説明するのにまさに聞こえがいい言葉だ。

金利も2003年から上昇基調に

 過剰貯蓄が投資先を求めているために、資産価格が上昇しているという解釈もある。これは、ベン・バーナンキ現FRB議長が数年前に提起した考え方で、彼は世界が「貯蓄過剰」の状態にあると論じている。

 しかし、これもデータの裏づけがない。
 
 IMFの世界貯蓄率調査によると、1970年代初め以降、貯蓄率はほぼ一貫して下降傾向を維持し、2002年から上昇に転じてはいるが、それでも30年間の最高水準をかなり下回っている。確かに、新興市場や産油国の貯蓄率は1970年以降上昇しており、特にここ数年の伸びは著しい。だが、これも先進国の貯蓄率低下によって相殺されている。

 また別の解釈がある。

 過剰流動性の状態とは単に、低金利を意味しているに過ぎないというものだ。だが2003年以降、世界の金利は上昇している。2003年には過剰流動性など言う者はほとんどいなかった。この表現は、金利の低下ではなく、上昇と平行して使用が増えてきたのである。

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