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第14章 破綻(3)

2007年7月30日(月)

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 10月に入っても、原油価格は下がるどころか、さらにじりじりと上げて行った。

 10月1日には、WTI先物が50ドル12セントと、史上初めて50ドルを突破。その後も、10月5日に51ドル9セント、6日に52ドル2セント、8日には53ドル3セントと、上げの勢いは衰えなかった。

 価格の高騰は、ナイジェリアの石油産業ストや、9月にメキシコ湾岸を襲って、石油生産設備や製油所に甚大な被害をもたらした史上最大級のハリケーン「アイバン」といった短期的要因と、米国、中国、インドをはじめとする世界の原油需要の着実な増加や、長く続いた原油価格低迷による油田開発投資の停滞という中長期的要因によるものだ。

 同時に、需要構造の変化も起きていた。すなわち、自動車、航空機などの輸送用燃料と家庭暖房用に使われるガソリン、軽油の消費量が増加する一方、産業用や発電用の重油の消費が、天然ガスにとって代わられるようになった。

 そのため、WTIや北海ブレントといった軽質原油の需要が逼迫し、中近東のカフジ原油やメキシコのマヤ原油のような重質原油の供給がだぶつき始めていた。

 オプション取引によるCAOの損失は雪だるま式に増大して行った。取引相手からの恒常的なマージンコールに悩まされながら、チェン・ジウリンらは、銀行にスタンドバイLCの発行を要請したり、取引相手に無担保での「益出し」を打診するなど、考えつくあらゆる手だてを試みた。しかし、問題解決の目処は立たなかった。

 10月9日――

 ジウリンはついに自力再建を断念した。もはや親会社に事態を報告し、指示を仰ぐしかない。社長室のデスクでパソコンに向かうジウリンの両目は充血し、目の下にくっきりと黒い隈ができていた。

 ジウリンは、毛深く太い指で、キーボードを叩いていった。

 報告書の要旨は以下の通りであった。

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「第14章 破綻(3)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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