
久しぶりの円高基調である。円ドルレートでは6月下旬に1ドル=124.14円、円ユーロレートでは7月下旬に1ユーロ=169.05円をつけてから、大きく相場が反転している。8月半ばには、円ドルレートでほぼ1年2カ月ぶりに1ドル=111円台、円ユーロレートでも9カ月ぶりに1ユーロ=150円を上回った。米国発の「サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題」で、長期にわたった「円キャリー(円借り)取引」や海外投資が巻き戻ったのが、最近の円高の背景だ。
ただし、そうは言っても中長期的に見ると円安の傾向には変わりがない。この2〜3年ほど、円の全面安が進んでいる。日本の主な貿易相手国通貨(26カ国・地域、15通貨)の為替レートを貿易額で重みづけして算出した実効為替レートでは、2007年6月に実質で93.4(1973年3月=100)となり、プラザ合意のあった1985年9月の水準を22年ぶりに下回った。
今年の夏休みに海外旅行に出かけた方は、海外での買い物が本当に高く感じたのではないだろうか。特にユーロは、2000年に最安値1ユーロ=約89円をつけてから約2倍に値上がりしている。単純に言えば、欧州のブランド品やワインは価格が7年前の2倍になっているということだ。
つまり、円の総合的な実力が大きく下がっているのである。端的に言えば、日本から資金が海外に流れ、「日本が売られていた」わけだ。果たしてこれは日本経済にとって好ましい状態なのだろうか。日本では、一般に円安の方が望ましいという意見が根強い。だが、私は、中長期的には円高の方が日本経済に好影響を及ぼす可能性が高いと考えている。これが今回の逆張りだ。
詳しくは後述するが、円高がいいという理由は、私が為替レートを国の株価のようなものだと考えていることにある。自社の株価が安くなって喜ぶ社長は何かおかしい。経済的、政治的に優れた国の通貨は買われるのが自然の原理で、歴史的に見てもそれが好景気につながることが多い。加えて、円安による資金流出で、企業は国内で資金を調達しにくくなる。
「サブプライムローン問題」に端を発した最近の急激な円高で製造業を中心に企業業績への不安が広がっており、株価も含め今後どのように進むかはもちろん注視すべきことである。だが、この問題を近視眼的にとらえ、「円高=悪」という考え方が再び首をもたげては日本経済の今後を誤りかねない。むしろ、もっと長い目で日本経済の構造的な課題を考えるよい契機ととらえるべきだ。
戦後の復興とプラザ合意が円高を恐れるトラウマに
とは言っても、「そもそも日本で円安が望まれるのはなぜ?」――そう考える読者は少なくないかもしれない。そこで、まずは日本で円安が好まれる理由を論じておこう。
理由は大きく2つある。1つは“戦後の復興”という長期的視点の理由、もう1つは、“現在進行形”の理由である。
日本経済の繁栄のベースは戦後の復興期にある。その原動力は製造業による輸出だった。当然のことながら、輸出で利益を上げるには円安の方が望ましい。円安であればあるほど、海外での価格競争力が強くなる。同じコストで作った商品を海外では安値で販売できるからだ。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



1963年生まれ、麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒業

からのご案内




