• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

サブプライム・ショックに
泣くファンド、笑うファンド

2007年8月31日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 銀行からの買収資金融資を生命線とする買収ファンドがかかわる大型買収案件が停滞している。米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅ローン)の延滞率上昇をきっかけとした金融市場の収縮が、これらのファンドへの融資を滞らせている。

 一説によると、3300億ドル(約38兆円、1ドル=115円で換算)もの融資が、ファンドに対して約されたが実行されないまま、「不良債権」として塩漬けになっている。通常、この手の融資は証券化され、債券として他行や機関投資家に転売されるが、今は信用収縮によりその買い手がいなくなっており、思わぬリスクを抱え込まされた銀行が身動き取れなくなっているのだ。

図大型買収案件の未実行ローン

 ローンの価値は既に10~15%も劣化していると推定され、これだけでもウォール街の投資銀行にとっては数兆円規模の損失になる。銀行からの多額の融資の見通しが立たないならば、買収ファンドの隆盛を象徴したいくつもの大型案件が実行されない可能性が高くなってきた。

規律を失った銀行

 この反動は、サブプライムでも騒がれているように、規律を失った銀行の融資姿勢が招いたとも言える。

 大型化した買収ファンドは何年もの間、投資銀行にとって最優良顧客だった。M&A(企業の合併・買収)の成約手数料、買収に伴う融資の組成手数料に加え、自社の自己勘定投資部門に共同投資の機会まで与えられる。幹事行としての座を取るための競争は激化し、金利はどんどん低くなり、キャッシュフローに対する融資額も大きくなっていた。

 通常は営業キャッシュフローの4~5倍と言われていた負債総額も、ピークでは10倍まで貸し込まれていた。銀行の融資は証券化されて転売される債券の買い手として、高い利回りを求める年金基金やヘッジファンドが台頭したことによって、銀行融資の信用リスクも転化され、貸し出しが膨れ上がっていった。

 融資総額だけではない。銀行が本来、思慮深い貸し手として持つべき重要なリスク管理手段も、次から次へと捨てられていった。いわゆるMAC条項(material adverse change、重大な事態の変更があった場合に融資実行を停止する権利)が放棄され、対象企業の業績に伴う各種の制限条項(コベナンツ)も不要となり、しまいには対象企業が金利払いを繰り延べできる選択肢までが与えられた。

 銀行のリスク管理や規律を無視した貸し込みが横行していたのは、個別担当者レベルで言えば、毎年末のボーナス査定時までにどれだけの案件を実行できるかのみが関心事項であり、将来の破綻リスクは二の次だったからだろうか。(本誌「プライベートエクイティ、宴の終焉?」参照)

 当の買収ファンドにとっては、有利な条件で融資を引き出せれば出せるほど、少ない自己資金で投資を行い、高いリターンを上げることができるから、このような銀行の甘い誘惑に乗らない手はなかったのだろう。

 困っているのは銀行やファンドだけでない。売却による資金を当てにしていた売り手側もそうである。大手ファンドへの売却が決まっていた米ホームセンター最大手ホーム・デポの卸売・流通部門は、数カ月前に合意していた価格から2割弱安い85億ドル(約 9800億円)で売却されると発表した。

コメント1

「岩瀬 大輔の投資ファンドは眠らない」のバックナンバー

一覧

「サブプライム・ショックに
泣くファンド、笑うファンド
」の著者

岩瀬 大輔

岩瀬 大輔(いわせ・だいすけ)

ライフネット生命保険社長兼COO

1976年埼玉県生まれ。98年に東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、2006年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

トランプ政権のここまでの動きはスロー。

ジョセフ・ナイ 米ハーバード大学特別功労教授