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ヤマ場は9月、クレジット市場

米サブプライムの波紋

  • 本多 秀俊

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2007年9月5日(水)

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 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の焦げ付きを発端としたクレジット市場の崩壊は、いまだにその全容を詳らかにされていない。当初は「軽い」と見られていたサブプライム問題はなぜ、世界の金融市場に影響を与えるまでの騒ぎに広がったのか。

 今年2月、英大手銀HSBCがサブプライムの貸し出しに関連して10億ドルの貸倒引当金を引き当てると発表したことでにわかに脚光を浴びたサブプライム問題は、「専門家」たちの間では楽観論が支配的だった。その最大の根拠は、サブプライム市場の規模が限定的であるという点にあった。

 確かにサブプライム住宅ローンが米住宅ローン市場全体に占める比率は12~13%程度に過ぎないと言われている。また、住宅を担保とするローンである以上、貸付額がそっくりそのまま回収できないような事態は考えられない。どんなに返済が滞ったとしても、サブプライム全体の15~20%以上の資産が毀損をすることはないというわけだ。

 だが、7月、米大手投資銀ベア・スターンズ傘下のヘッジファンド2社が、サブプライム投資で損失を計上した時、投資家から集められた約16億ドルの資金はほとんど返ってこなかった。それどころか、ベア・スターンズ本体は、ファンドから生じた損失の穴埋めのために、さらに16億ドルもの追加資金の投入を余儀なくされた。住宅ローン市場全体からすればわずか数%、サブプライムに限っても15~20%以上の資産が毀損することはなかったはずが、なぜこのようなことが起こり得たのか。

レバレッジの魔力

  答えは、こうしたクレジット商品の特徴の1つである「レバレッジ」にある。

 レバレッジとは、一般に、投資家から集めた元手となる資金に加えて、銀行など金融機関から借り入れをすることで、元々の投資額に比して、より効率的な運用利回りの提供を可能にする仕組みを言う。例えば、5億ドルの資金で購入したサブプライム証券など資産担保証券(ABS)を、さらに担保として資金を借り入れ、その資金で別の資産担保証券などを購入、さらにそれを担保に…といった作業を繰り返すことで、資産を50億ドルにまで膨らませたファンドを想定してみよう。

 そうすることで保有資産全体が仮に10%の運用利回りを上げれば、5億ドルの利益、つまりこのファンドに投資した人にとっては、投資資産に対して100%に当たる運用益を獲得できることになる。しかし、逆に保有資産の価値が45億ドル(-10%)にまで減価すれば、このファンドの価値はゼロになってしまう。ベア・スターンズ傘下の2ヘッジファンドの場合、投資家から集めた資金の約16億ドルに対し、銀行などから借り入れていた資金は実に200億ドルにも上っていたという。

分散効果と優先劣後構造に対する過信

 また、クレジット商品の中には、銀行借り入れで資産を膨らめるような単純明快な方法以外にも、レバレッジを高める仕組みを持つものが多く存在した。その仕組みを支えたのが、こうした金融商品のもう1つの特徴である「優先劣後構造」とポートフォリオの「投資分散」にあった。

 そもそも証券化商品では、担保となる資産を裏づけに発行する証券を、リスクの異なるいくつかの層に切り分け、貸し倒れなどのリスクを一部の層に圧縮する手法が一般的に採用されていた。これを優先劣後構造という。

 例えばサブプライムローンを裏づけに発行された証券が、債務不履行により損失を計上したりした場合、その損失を真っ先に負担しなければならない底辺の部分は、その分、高い利回り(高レバレッジ)を提供されることになる。逆に、損失から最後まで守られる上澄みの部分は、相対的に低い利回りしか期待することはできないわけだ。

 1990年代後半から広く人気を博したCDO(債務担保証券)のようなクレジット商品の中には、その資産にサブプライムのほか、各種の資産担保証券をポートフォリオとして保有及び管理し、そのポートフォリオ全体を担保として発行された2次派生的な資産担保証券が存在する。こうして、裏づけとなる資産を分散投資することで、同質の資産を担保とした場合よりも、安定的で機動的な運用が可能になると期待された。発行される証券は、さらに、優先劣後構造をつけて切り分けられることになる。

 新しく組み上げられた2次派生的な資産担保証券は、極めて幅の広い内容の資産を裏づけに発行されるわけだが、その証券の大半は分散投資と優先劣後構造を通じて、非常に安全性が高いと見みなされていた。しかし、資産内容が複雑であることが、値洗いの煩雑さや流動性の欠如に直結する事実は、ほとんど顧みられることはなかった。

 今般の混乱を加速させた要因の1つに、予想以上に短期の証券として切り売りされていたという事実もあった。満期が来た時点で、現在価値も容易に確定できない資産を担保とした証券を、誰が再び購入するのだろうか。

金融商品の進化に対する慢心

 それでも、金融市場が「専門家」たちの想定する値動きの範囲内にとどまっていれば、投下資金が全額回収不能になってしまったり、何十億ドルという資金を傘下のファンド救済のために親会社が投入したりするような事態には至らなかったはずだ。しかし、現実に、事態は想定をはるかに超えた、尋常ならざる状態にまで悪化してしまったのだ。

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