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第15章 ドナウ川の旅人たち(2)

2007年9月25日(火)

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 翌日――

 ユジノサハリンスク市内、ジェルジンスキー通り35番地にあるサハリン・リソーシズ・デベロップメント社の6階会議室で、サハリンBの財務委員会が開かれた。

 窓の外では、雪が降りしきっていた。吹雪に近い白いカーテンの中で、各戸がベランダに手製の出窓を造りつけた灰色のソ連風アパート群、商業ビルやホテル、終戦後も日本人技師たちが働いていた鉄道駅などが、霞んで見える。

 「……財務委員会の意見としては、ファイナンスが組成できるかどうかという観点が中心になると思うのですが、これだけクリアーな形で勧告が出たのであれば、何らかの対策を打たないと、金融機関は融資しづらいんじゃないかと思います」

 髪を短めに刈り、縁なし眼鏡をかけた金沢がいった。チャコールグレーのスーツ姿。

 口の字型に並べられた会議用テーブルを、20人ほどの人々が取り囲み、中央に、アングロ・ダッチ石油からサハリン・リソーシズ社に出向し、CFO(最高財務責任者)を務めているオランダ人男性がすわっていた。

 「JBICやEBRDをはじめとする金融機関は、本音では、本件に是非とも融資したいと思っています。しかし、彼らは、世論の風向きに反してまで強硬できない」

 金沢の言葉に、テーブルの周囲の人々が頷く。

 「パイプラインを南に20キロメートル移動させるというのは、我々が対策を打ったということを目に見える形で示すことになると思うし、追加コストもそれほど大きなものではないと思います」

 「まあ、PSAで、プロジェクト・コストは全額回収できることになってるしな」

 金沢の近くにすわったアングロ・ダッチ石油のイアン・ジョンストンがいった。いつも人を食ったような顔の長身で年輩のイギリス人である。

 「僕も、その意見に賛成だ」

 「他の対策もやれといわれたら?」

 誰かがいった。

 「それはノー・ウェイ(まったく不可能だ)。That will kill the project.」

 ジョンストンの口調はソフトだったが、発言内容は断固としていた。

 「1点付け加えさせてもらいたいんですが……」

 CSFAの男がいった。金髪で彫りの深い顔立ちをした中年の英国人で、肩書きはディレクター(次長クラス)。隣りに、オックスフォード出の坊ちゃん顔の男が控えていた。こちらはアソシエイト(平社員)という肩書きである。

 「どういう対策を打つかは、5月のEBRDの年次総会以前に発表していただきたいと思います。というのは、EBRDは、5月の総会の後に、コンサルテーションを始める予定をしているからです」

 コンサルテーションとは、実務担当者レベルで融資をすると決めた後、地域住民やNGO、その他関係者(ステークホルダー)から、4~6ヶ月の期間、意見を受け付けること。コンサルテーション期間が満了すると、出資各国代表者の会議である理事会で融資の最終決定がなされる。

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「第15章 ドナウ川の旅人たち(2)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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