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ロシア:その2
“未成年の銀行”がもたらすM&A増

  • スティーブ・モリヤマ

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2007年11月1日(木)

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 最近、ロシアで仕事をしていると、買収案件の依頼が特に多い。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)ロシアの調査によると、ロシアM&A(企業の合併・買収)市場の2006年度における市場規模は1110億ドル、成長率は前年度比111%増で、案件数では、2005年の706件から2006年の1210件に増加した。

 取引の大部分は、製造業、金融業、エネルギー・公益事業が占め、2006年度における最大規模の案件は、ロスネフチによる別のガス会社の買収で、66億ドルだった。なお、日本企業もロシアで買収や資本参加を検討する会社が増えているが、投資先としては中小企業が多い。

 米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の焦げ付き問題の影響で、世界的にM&A案件が減っている中、どうしてロシアでは例外的とも言える「うねり」が渦巻いているのだろうか。その背後には、ロシアの銀行産業は発展途上で、旺盛な資金需要に対処しきれていない現状がある。

銀行が誕生してまだ20年に満たない

風景

 ロシアの銀行セクターは、1998年の通貨危機以降、急激に拡大してきたものの、GDP(国内総生産)に占める割合は50%程度で、日本などと比較すると、まだまだ小さい。ロシアにおける銀行制度の歴史は20年に満たないことが影響している。

 ソ連時代は銀行や金融は存在しておらず、91年暮れの体制転換後からの歴史しかない。その間、新しい銀行が次々に誕生し、その数は累計で3000行に上る。ただし、そのうち7割近くが既に姿を消している。それでも1000行ほどの銀行が現在、ロシアに存在している。

 ロシアの銀行産業は、数は多い一方で、寡占化が進み、トップのロシア貯蓄銀行(ズベルバンク)を筆頭に上位20行だけで総資産、預金、貸し出しの市場合計の5割から7割を占めている。その一方で、急拡大する国内消費市場に対応できる資金力がある銀行は少なく、国内の企業の旺盛な資金需要に応じるためには、欧米の金融機関からの資金供給に大きく依存していた。

 ところが、サブプライム問題に端を発する金融市場の信用収縮で、欧米をはじめ海外の金融機関からの資金調達ルートが閉ざされつつある。そうなると、ロシアの事業会社は、国内の銀行から借り入れが困難になってくる。

 ロシアは現在、記録的な消費拡大の中にあり、企業としては、投資を中断すれば、せっかくの成長機会をみすみす逃すことになる。必要な資金を得るために、持ち株の一部を資金力のある会社に売って戦略的提携を図る企業が増えているのが、現在、ロシアでM&Aが拡大している理由の1つだ。

 そのほかの理由として、急激な成長下でも先行きに不安を感じている中小企業もあり、身売りする企業も出ている。他方、買い手からすると、交渉力が増し、割安な買い物ができる可能性も出てくるわけである。

ロシアM&Aの落とし穴

 ロシアで買収を検討する際の相手先の実態調査は面白い。日本ではあまりお目にかかれない、複雑怪奇な関連会社間取引など、様々な不明瞭取引に遭遇することが少なくなく、一瞬、化け物屋敷に迷い込んだような感覚にとらわれることさえある。そんな知られざるロシアンM&Aワールドを、次の2点に焦点を絞って少しだけ覗いてみたい。

(1)特殊な税務コンプライアンス環境

 日本の場合、デューデリジェンス(資産査定)において税務に重点が置かれるケースは多くはない。調査されないわけではないが、あくまで財務調査の一環として補足的に行われることが多い。このせいか、ロシアの会社を買収する際に、税務上のリスク査定が最重要検討課題の1つであることに、実感としてピンとこない日本企業の担当者が少なくない。

 ロシアの場合、欧州と比較して、特に税率そのものは高くないのだが、かつては「税務警察」と呼ばれた組織さえ存在したこともあり、歴史的に税務当局の徴税姿勢が厳しい。また、末端の調査官に重いノルマが課されているのと、調査官の知識・経験にバラつきがあることから、時として非論理的な対応がないとは言い切れない。このため、潜在的租税債務の精査は不可欠なのである。

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