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G7はなぜサブプライム問題に無力なのか

新興国台頭で世界の病根「米経常赤字」の意義変わる

  • 本多 秀俊

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2007年10月31日(水)

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 10月19日に米ワシントンで開催されたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)は、様々な問題提起をしながら、結局、その対処法に関しては何ひとつ具体的な方針を示せないまま、「予想通りの期待外れ」という結果に終わった。「G7の限界」が言われて久しいが、世界経済の直面する様々な問題が先進国の手に負えなくなってしまったのは、なぜなのだろうか。 筆者なりの答えを導くために、世界経済の「病根」の在りかを探り、それに対する1つの処方箋を提示してみた。

世界経済の病根=米経常赤字

 昨今の世界経済が抱える問題に対し、G7が手をこまぬいているのは、単純に市場規模の肥大化だけが理由とも思えない。議論の底流には、誰もが「ドル安はやむを得ない」との諦観を抱いており、議論の核心は常に「誰がドル安の負担を負うか」という点に集まっているからだ。

 なぜか。 それは、現在の世界経済が抱える諸問題の多くが、米経常赤字の無秩序な拡大に根ざしており、米経常赤字は、既に米国一国の問題をはるかに超えて、世界経済の均衡を脅かす存在になってしまっているからだ。

 下の図は、四半期ごとの米経常赤字と、1991年来の同赤字を単純に積み上げたものをそれぞれ、米GDP(国内総生産)との対比で表したものだ。一時はGDPの7%近くにまで膨張した経常赤字が、近年は若干の落ち着きを見せているものの、累積で積み上がった赤字は今年第2四半期までにGDPの160%にまで達してしまっている。

■米経常赤字の推移

 この夏、市場を震撼させた米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)ですら、まがりなりにも「住宅」という担保がその背後にあったが、経常赤字には何の担保があろう。いわば米国は「信用」だけを頼りに、その国の「年収」であるGDPの1.6倍にも当たる借金を積み上げてしまったのだ。

 米国の「借金」は、そっくりそのまま、米国以外の国々の「売掛金」として世界経済の活況を支えてきた。つまり、米国に身の丈に合わない消費継続を可能にしたのも、何のことはない産油国やアジア各国を代表とする輸出国が、米国に付与した「信用」に過ぎない。いわば、諸外国は、米国に貸し付けた金で自国産品を購入させていただけのことで、これが「不均衡」の正体だ。

 こうして考えれば、「過剰流動性」がどこから生み出されてきたかも分かる。政府ファンドの膨張にしても、米国の借金なしには起こり得なかった現象だ。原油価格高騰の背景にある中国など新興国の強い需要も、米国の旺盛な消費抜きでどうして起こり得ただろうか。クレジット市場の急激な拡大と崩壊も、ここまで金余りの状況が生まれ、資産運用に対するモラルハザードの低下があったからこそ起きた現象と言えるのではなかろうか。

一蓮托生の世界経済

 今般のクレジットバブルは、米国一国の問題を大きく逸脱して、世界経済の問題となっている。

 この構図は、米経常赤字を病根とした「対外不均衡」や「過剰流動性」の問題が、既に、米国一国の手を離れ、世界経済共通の問題となっている現状と共通する。「米国に貸した金は取りっぱぐれることはない」という神話を、もはや誰も信じないとしても、これだけ借金が肥大化してしまった今、下手に騒ぎ立てて手元に積み上がった米国への貸し金の価値を吹き飛ばしてしまうリスクを、誰も冒せなくなってしまっているからだ。

 このような状況が、世界経済の脅威であることは疑いようもない。今般のクレジット危機のようなトラブルが引き金となって恐慌的なドル売りや米資産売りが起きるリスクは常に存在するし、米国の借金がGDPの160%である現状が仮に均衡を保てたとしても、それが200%、300%へと際限なく拡大していけるとは到底考えられないからだ。米経常赤字の抑制が不可避ならば、その調整はできるだけ早い段階から、徐々に進めていくのがよい。

コメント4件コメント/レビュー

非常に説得力があり、論理も納得できる。米国はソ連との冷戦で軍事費その他で実力以上の出費が必要だった。また社会主義勢力に弱みを見せたくないため、完全雇用を何とか維持しようとする必要、および金融パニックを消し止める必要から、ルーズな金融政策を続けるしかなかった。その時点で長期ドル安は宿命となっていたのだと思う。ソ連が消滅してからも、ドル経済圏の構築という表向きで、安易な借り手と投資家に甘い金融政策の流れは変わっていない。バブルの沸騰も完全な崩壊もないまま今日まで蓄積され続けている負債と貯蓄が、過剰流動性となってうごめく状況は当分変わらないだろう。本多さんには今後も的確なコメントを希望する。(2007/10/31)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

非常に説得力があり、論理も納得できる。米国はソ連との冷戦で軍事費その他で実力以上の出費が必要だった。また社会主義勢力に弱みを見せたくないため、完全雇用を何とか維持しようとする必要、および金融パニックを消し止める必要から、ルーズな金融政策を続けるしかなかった。その時点で長期ドル安は宿命となっていたのだと思う。ソ連が消滅してからも、ドル経済圏の構築という表向きで、安易な借り手と投資家に甘い金融政策の流れは変わっていない。バブルの沸騰も完全な崩壊もないまま今日まで蓄積され続けている負債と貯蓄が、過剰流動性となってうごめく状況は当分変わらないだろう。本多さんには今後も的確なコメントを希望する。(2007/10/31)

大変秀逸な記事で勉強になりました。グローバルな観点から富の不均衡を考えるわけですが、少し別の表現を用いるなら「アメリカの平和」の解消と「南北問題」の軽減ということが可能でしょう。そう見るなら、レートの変動による米形状赤字の圧縮、が実現されるとして、その過程に米国の軍事行動が占める役割が見えてくるような気がします。共和党ネオコン指導部はいまだイラン攻撃やその後の「戦後復興という形を取っての収支改善」を考えているようですが、そのような形ではなく、誰がヘッドになるにせよ戦争終結を掲げるだろう民主党政権のもとで、新興国向けの円滑かつ健全な支援がなされ、結果的にドル安へのソフトランディングがなされれば・・・などと思いました。(2007/10/31)

日本の輸入品に対する規制は既にかなり少なくなっているとは思いますが、このアメリカ経常赤字を見ると、規制緩和よりも日本人一人一人にアメリカ製品を買う意思が必要な段階に達しているようです。この前買ったアメリカ産のソファは素晴らしかったです。アメリカ人もいい仕事をします。筆者もアメリカ経常赤字を問題にされるならば、良いアメリカ製品を紹介してください。(2007/10/31)

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三品 和広 神戸大学教授