「after crisis 燃えるタイ経済」

失業率1.5%、豊かさ求める消費者が登場

アジア最大級のショッピングモールが競うように建設

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2007年11月19日(月)

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サイアムパラゴン内の吹き抜け

 入居するブランドの数は、バレンチノやベルサーチ、エルメスなど世界から集まった約250に及ぶ。6階まで吹き抜けのあるエスカレーターを上っていくと、マセラッティやBMWといった高級車の販売店が隣り合わせ、最上階には1200席収容や8階建のビルと同じ高さの3Dスクリーンを備えたものから、34のVIP専用席しかないものまで16の映画館が並ぶ。そして地下には、アジア最大の水族館――。

 バンコクにある巨大ショッピングモール、サイアムパラゴン(SIAMPARAGON)は、見た目はそれほど目立たないが、その中身は知れば知るほど底知れぬものを感じる現在のタイ経済を象徴する場所だ。

 インターコンチネンタルホテルなどが立地するラマ1世通りに面するサイアムパラゴンは、地上6階、地下2階の建物に過ぎず、ここ数年、東京で次々とオープンしている商業施設と比べると、見た目の派手さはない。今月に東京駅八重洲口にオープンしたばかりのグラントウキョウノースタワーは地下4階地上43階建て。グラントウキョウノースタワーより一足先の3月にオープンした東京ミッドタウンのミッドタウンタワーは地上54階建てと、これみよがしに高層ビルがそびえ立っているが、サイアムパラゴンにはそうしたシンボルはない。

延べ床面積50万平方メートル、グラントウキョウノースタワーの約3倍

サイアムパラゴン内にあるクルマの販売店

 しかし、延べ床面積で比べると、立場が逆転する。サイアムパラゴンは約50万平方メートルと、グラントウキョウノースタワーの約17万1770平方メートル、ミッドタウンタワーの約24万6600平方メートルに対し2〜3倍の広さを持つ。確たる統計はないが、アジア最大級の広さ、と言われるのもうなずける。

 サイアムパラゴンの賑わいを見ると、1997年に通貨危機によって疲弊したタイ経済が遠い昔のことのように思われる。ここに入居する店舗の店員に話を聞くと、一昔前のタイの百貨店と違い、今やタイ人客も人数で大きな割合を占めると言う。

 実感としても10年前、現地のタイ人を百貨店で見かけることはあまりなかった。5年前もそうだった。しかし、今はすっかり状況が違う。タイの人が高額商品をこともなげに買っている。つい先日出かけた際、店員に聞いてみると、今は42インチ以上の液晶テレビが売れ筋商品だと言う。

 2000年代に入ってからの経済発展で、タイの消費者は必需品のみならず、贅沢品や娯楽・遊興に金を投じるようになった。企業もそうした消費者をターゲットにしたサービスを展開し始めた。

映画館の比較対象は、高級ホテル

最上階にある1200席の映画館

 シネマコンプレックス(複合映画館)などを運営するタイ証券取引所の上場会社、メジャー・シネプレックス・グループもその1社。メジャーは冒頭に説明したサイアムパラゴンで映画館のほかボーリング場やカラオケなどを運営する。

 メジャーのCSO(最高戦略責任者)ジラデ・ヌシュヒット氏によれば、サイアムパラゴン内の映画館などの娯楽施設を開設するに当たっては、ベンチマークにしたのは他の競合のシネマコンなどではなく、フォーシーズンズやコンラッドといった高級ホテルにしたという。

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著者プロフィール

此下 竜矢(このした・たつや)

ユナイテッド・セキュリティーズ(United Securities PCL)
代表取締役

此下 竜矢

1972年大阪府豊中市生まれ。大阪大学文学部国史学研究科卒後、東南アジアに広範に投資する独立系投資ファンド、APFに入社。2006年からAPFが買収したユナイテッド・セキュリティーズで現職を務める。   (写真:Orie Miyajima)



このコラムについて

after crisis 燃えるタイ経済

1990年代初頭、急成長国の代名詞のように取り上げられたタイも、97年に通貨危機が襲い、今やそのイメージは中国、インドにすっかり取って代わられた。しかし、タイの名目GDP(国内総生産)はどん底に陥った危機翌年の98年から2倍に膨らみ、同じ期間の中国の約2.5倍とそれほど差はない。昨年、バンコクには成田空港の3倍程度の広さの新空港がオープンするなど、タイの成長は巨大インフラの整備と共にさらに進む可能性を秘めている。タイそしてASEAN(東南アジア諸国連合)の今、そして近未来を、タイをベースにビジネスをする筆者が語る。

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