• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

ベルギー:「国家分裂危機」の真相

  • スティーブ・モリヤマ

バックナンバー

2007年11月29日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

ベルギーの地図

 ベルギーと言えば、高級チョコレート、ビール、ムール貝、ワッフル、オードリー・ヘップバーンの出身地、フランダースの犬を思い浮かべる日本人も多いかもしれない。

 しかし、日々のニュースに接していれば、国際政治の場をイメージする人もいるだろう。ベルギーの首都、ブリュッセルにはEU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)の本部をはじめとする国際機関が集積する。

 政治の動きに経済は、敏感に反応する。ブリュッセルには、多国籍企業の欧州統括会社が多数、置かれている。日系企業では、従業員数2000人以上を抱える欧州トヨタ自動車をはじめ、ブリヂストン(5108)、ダイキン工業(6367)、パイオニア(6773)など製造業の欧州統括拠点が置かれている。

 機能面に限らず、地理的にもベルギーは「欧州の中心」にある。ほとんどの欧州の主要都市には飛行機で1~2時間で行けるし、車で移動する場合も、オランダ、ドイツ、ルクセンブルク、フランスなどは2時間程度で着く。パリはフランスの新幹線TGVで1時間程度の距離にある。企業が重要拠点をベルギーに置くのは、こうした交通の便の良さも無縁ではない。

税制優遇という武器を使い続ける小国の勝負魂

 ベルギーは、総面積3万528平方キロメートルに約1000万人が住む。どちらも日本の約12分の1のこの小国は、積極的な外資誘致政策を取って成長してきた。例えば、かつてはコーディネーションセンター税制という特別優遇税制を前面に出して、多数の欧米企業の統括会社の誘致に成功した。

 近年、この税制が「有害な税制」として欧州委員会のブラックリストに載せられてしまい廃止が決まったものの、それにもめげず、最近「みなし利息控除」(資本金をあたかも負債のように考えて「みなし利息」の損金算入を認める)という奇策を打ち出し、さらなる外資誘致に積極的に取り組んでいる。

 表にあるように、ベルギーの実質GDP(国内総生産)成長率は2006年で3.0%、失業率は8.2%、インフレ率は1.8%。同じEU27カ国では、3.0%、7.9%、2.3%なので、経済状況はEUの平均並みという状況だ。問題は累積の政府債務残高が高水準なことだ。

 この問題を理解するには、1970年代まで遡る必要がある。オイルショックのころ、ベルギー政府は、官公庁や政府系企業などで積極的に大量の失業者を採用し、または凋落していく重厚長大産業に補助金をばら撒いたり、あるいは我田引鉄的なインフラ投資を繰り返した。

 振り返ってみると、政府の経済政策はことごとく裏目に出て、ただいたずらに政府債務を膨らませた。OECD(経済協力開発機構)によれば、96年にはGDPに占める累積の純政府債務残高の比率は115.3%に達した。

 ただしこの水準は96年を境に下落傾向に転じた。背景にあるのは、99年1月にEMU(欧州経済通貨同盟)に加盟したことだろう。ベルギーはユーロに加盟する条件の1つである、「政府債務残高がGDPの60%以下」「財政赤字がGDPの3%以下」を満たしていなかったが、大幅な改善努力をすることを条件に、EMUへの第一陣参加が認められた。もっとも、未だに60%基準を満たしていない。

ベルギーの主な経済指標の推移

 OECDによれば、2006年時点でGDPに占める累積の純政府債務残高は75.7%となっている。とはいえ、同じ年に94.6%のイタリアと共にEUの中では、累積債務残高は高水準だ。財政基盤の強化の意味からも、優遇税制は存続が問われそうだ。

かつては世界3位の経済大国だった、ことがもたらした不安

 そのベルギーに現在、政府債務問題以上にこの国の未来に暗い影を落としているのが南北の地域対立の激化だ。このところ、ベルギーの街を歩くと、民家の窓からベルギーの3色国旗が掲げられているのをよく見かける。その光景はどこか沈鬱とし、人々の悲壮な願いを感じざるを得ない。

 というのも、ベルギーでは今年6月の総選挙以来、連立政権が発足しない「政治的空白」が5カ月以上も続いているからだ。その背景にあるのが、オランダ語圏の北部フランダース地域とフランス語圏の南部ワロン地域の南北の地域対立がある。

 1830年の建国以来、両地域は対立してきた歴史はあるものの、状況がこれほど悪化したことはない。現在は、南北分裂の危機さえ叫ばれているのだ。膠着状態が続く中、分離を望まぬ市民たちは、ただひたすら自宅の窓から国旗を掲揚し、国家が分裂しないよう願を懸けている。

 日本ではあまり知られていないのだが、ベルギーという国は、100年ほど前は米英に次ぐ世界第3の経済大国だった。欧州では英国に次ぎ、大陸では最も早く産業革命が起きた国で、特に南部(ワロン)を中心に石炭、製鉄、機械工業は栄えた。

「知られざる欧州の素顔」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「タイム・トゥ・マーケット」で売らないともうからない。

栗山 年弘 アルプス電気社長