米国景気に不安が台頭している。春先までは、成長スピードが落ちずに、インフレ圧力がかかることが心配されていた。以前は、景気の減速はインフレ圧力を緩和させる安心材料と見る余裕もあったが、米サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)の焦げ付き問題に端を発した金融の動揺が収まらず、そうした余裕は消えた。
家計部門で見ると、住宅は、建設、販売ともに深い調整になっている。住宅着工戸数は、10月の数字は増加であったが、これは集合住宅の数字が振れているためで、コアの一戸建ての数字は弱い。販売も在庫と販売の比率で見ると事態は悪化している。これは、さらなる値崩れを懸念させ、購入を控えるデフレ的な行動を引き起こす。
個人消費は比較的堅調で、急失速は見込まれていない。しかし、所得を支える雇用は、前年同月比で見ると減速している。新規の求人広告(HELP WANTED INDEX)は、低下傾向にあるし、新規失業保険申請件数もやや増えている。消費は、景気を成長させる支えにはなっているが、エンジンとしてはパワー不足かもしれないという不安が出ている。
輸出を巡る楽観論と悲観論
企業の投資は、もっと厳しい。企業活動を見ると代表的指標のISM(米サプライマネジメント協会)製造業景況指数は、景気の分岐点の50をわずかに上回るだけである。在庫の減り方が、少しでも弱まれば、50を割りかねない。そうした動きを受けて、耐久財受注のコア部分は、実質化すると前年を割り込んでいる。金融機関は、貸し出しの姿勢を厳しくしており、その金融面の影響が、今の米国の成長を支える非居住用の建設投資を抑制することが、目下の危惧である。
一般の経済論議では、輸出の好調が言われる。ここも実は、手放しで楽観はできない。米国の成長の勢いが鈍ると、やがては、米国から海外への輸出が鈍るものである。ここは、新興国の成長が自律的で、強いから、時代が違うということで、楽観論と悲観論の対立のポイントである。
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1956年群馬県生まれ。79年慶應義塾大学経済学部卒業、三和銀行(現三菱 東京UFJ銀行米州市場部ニューヨーク駐在シニアエコノミストUFJ銀行)入行。調査部、資金証券部、企画部を経て、88年三和投資顧問エコノミストに就任。93年にロンドン駐在エコノミストとなってからは、国際的視点に立った経済分析を得意とする。2001年よりニューヨークに赴任し、2006年より現職。著書に、『景気と株価はどう動く』、『外債投資の実務』(ともに共著)がある。 (写真 丸本 孝彦)







