• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

第16章退役イギリス軍人(7)

2007年12月17日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 翌週――

 亀岡は、フランクフルト経由でテヘランに向かった。油田開発の現状を視察し、核開発問題や国際協力銀行の融資について話し合いをするためだった。航空会社はいつものとおり、お気に入りのルフトハンザであった。

 4月下旬のテヘランは、陽射しが強かった。

 市内北部にある国際見本市会場のゲートの先には、世界各国の国旗が翻り、彼方に雪を頂いた標高3933メートルのトーチャール山が聳えていた。

 大勢のイラン人や外国人たちが、人の波となってゲートを出入りしていた。

 イラン石油省主催の「第11回石油・ガス・石油化学見本市」であった。

 南北500メートル、東西1キロの広い敷地内に、4~5階建てのパビリオンが10棟以上あり、世界中からやって来た数百の企業が、ブースを出していた。シーメンス(独)、トタール(仏)、アングロ・ダッチ石油(英蘭)、ガスプロム(露)、BHPビリトン(豪)、コーラス(英)といった国際企業の他、東芝ウェスチングハウス、タツノ・メカトロニクス(港区芝浦)といった日本企業も出展していた。各社のブースに展示されているのは、ガスタービン、掘削用パイプ、パイプの表面加工サービス、防災服、計器類、石油貯蔵施設、モーター、ボルト、潤滑油など、石油・ガス関係のありとあらゆる製品とサービスである。

 「ああ、どうも、亀岡でございますぅ。いつもお世話になっとります」

 ブースの1つで、スーツ姿の亀岡が、腰を深々と折り曲げた。

 「いかあっすか、ご商売のほうは?」

 「はあ、来る前は、アメリカが核施設に攻撃を加えるとか、ミサイル基地を攻撃するんじゃないかって話があって、ずいぶん心配したんですが、来てみると、まったく平和なもんですねえ。商談も色々できました」

 ガソリンスタンド用給油機を展示している日本企業の社員がいった。

 「ちょっと海外では、報道が大げさですからなあ」

 亀岡がだみ声でいった。

 「日本の新聞社の方に聞いたんですが、『イランは悪の帝国』という図式じゃないと、本社が記事を取り上げてくれないんだそうです」

 亀岡の隣りに立った、大柄でファイト溢れる商社マン風の男性がいった。

 トーニチの前テヘラン事務所長で、現在は、油田開発を請け負っている経産省系石油開発会社のテヘラン事務所長を務めている。年齢は50歳くらい。

 「まあ、イランは今日も事もなし、という感じですなあ」

 亀岡がいい、一同は笑った。

 亀岡と事務所長は、日本企業のブースを辞し、パビリオンの外に出た。

 敷地内には、開放的な屋外ブースのほか、サンドイッチやピザ、飲み物の露店も出ており、ディズニーランドのような賑わいである。

 「アメリカ何するものぞ、という感じだな」

 歩きながら亀岡がいった。

 「ええ。1つのデモンストレーションですね」

 会場内には、頭を黒いスカーフで覆って、上着の上から黒いコートを着た女性たちも多い。

 「油田開発のほうの話し合いはどうだ?」

 「はい。相変わらず、地雷が問題になっております」

 「やはり地雷か……」

 亀岡が、難しい表情になる。

コメント0

「黒木亮連載小説「エネルギー」」のバックナンバー

一覧

「第16章退役イギリス軍人(7)」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万〜数百万円で売られている事例もある。

名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官