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米ドル安におびえる香港の悩み

  • 豊島 信彦

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2008年2月19日(火)

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 香港ではもはや恒例の風景が、見られなくなるかもしれない。

 日曜日ともなれば、メイドなど出稼ぎに来ているフィリピン人女性たちが日がな一日、路上で会話に明け暮れている。本国に少しでも多くの額を送金しようと、倹約するため食事もレストランに行かず路上で食べている人も多い。

 しかし、香港ドルの低迷で、そうしたけなげな努力も徒労に終わりかねない。もはや彼女たちは、香港以外の地域に出稼ぎの場所を求め始めるかもしれない。

1年で15%近い下落

 香港ドルの対フィリピン・ペソのレートはこの1年で、6.4ペソから5.4ペソにおよそ15%近く下落した。若いフィリピン人労働者は基準賃金の3480香港ドル(約5万円)の月給から、母国に仕送りしている中で、15%の値下がりはきつい。こうした状況に改善が見られなければ、ほかの通貨の強い国に働き場所を移そうと考えても不思議ではない。

フィリピン・ペソの対香港ドルレート

 2月13日の香港サウスチャイナ・モーニング紙は「中東かカナダで職を探したい」というフィリピン女性のインタビューを載せている。地元の人材会社に聞いてみると、通貨安の影響で、単純労働者に限らず企業の管理職クラスまで、海外から人材をリクルートするのが難しくなっているとのことだ。

 香港に14万1720人いるフィリピン人(2005年末、パスポート所持者)には悩ましいところだ。アジア開発銀行によると、フィリピンのGDP(国内総生産)の10.9%は海外からの送金で占められるという。香港の通貨問題はフィリピン経済にまで影響する。

 ではなぜ香港の通貨が、対フィリピン・ペソで安くなっているのか。フィリピンのGDP成長率が2007年には推定で7.3%とされ、31年ぶりの高い伸びを示していることもある。しかし、それ以上に米ドルが安くなっていることが大きい。

 現在、香港ドルは米ドルと7.80のペッグ率で連動するカレンシーボード制()を採用しており、米ドル安がストレートに響いている。このため、タイバーツや韓国ウォンに対しても同様に香港ドルは値下がりしている。

人民元の切り上げも響く

 香港は160年余りの歴史の中で通貨制度をたびたび変えてきた。アジアの交易の中心地として、そして近年は金融センターとして、強い通貨を維持する必要があるためで、1983年からは米ドルと連動する固定相場制を導入している。

香港の通貨制度の歴史

 悩ましいのは、香港経済に密接な関係を持つ中国の通貨・人民元が2005年7月に管理変動相場制を導入して以来、ジリジリと対ドルレートを切り上げていることだ。元の当初の基準レートは1ドル=8.11元だったが、昨年初めに香港ドル(1ドル=7.8香港ドル)を抜き、現在は1ドル=7.2元弱まで上昇している。人民元はかつて香港ドルより6%ほど安かったのが、いまや8%弱高い。

人民元・香港ドルの対ドルレート(1986~2008年、月足)

 やや乱暴に言ってしまえば、香港ではこうした香港ドル安・人民元高を歓迎する企業は多い。香港から中国への“輸出”に好都合であり、中国から香港経由の輸出にも支援になる。さらに中国本土からの投資が増え、買い物客が訪れやすくなるメリットも大きい。

 この旧正月休日期間(2月6~12日)に香港を訪れた本土の団体客は4割増、と香港紙が推定している。香港ドルと実質的に通貨が連動しているマカオ(通貨はパタカ)でも状況は同じだ。元高で本土から訪れるカジノ目当てのギャンブラーが急速に増えている。昨年の海外からの来訪者は23%増の2700万3300人に達した。うち本土からが55%を占める。

 問題は、今の通貨制度のままだと、香港ドルは今後さらに値下がりしていく可能性があることだ。そうなると海外からの労働者は敬遠するだろうし、何より通貨安はインフレにつながりやすい。

米金利の利下げも重し

 もう1つの悩みが米国金利の下落だ。カレンシーボード制の下では、香港は独自の金利政策を放棄し、金利を米国と連動させる必要がある。そうなると、インフレでも利下げを余儀なくされる。今年に入って米国は2度、合計1.25%、米国の短期金利の指標であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を引き下げた。しかし、香港の市中銀行は貸し出し、預金金利を1.0%しか下げなかった。

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