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フィンランド:
「知の楽しみ」は白夜がよく似合う

  • スティーブ・モリヤマ

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2008年2月21日(木)

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フィンランドの国旗

フィンランドの国旗

 フィンランド語で「スオミ」と呼ばれるこの国は、ムーミン、ノキア、リナックス、サウナなど、日本にとって決して馴染みの薄い国ではない。人口は520万人と少ないが、面積は日本とほぼ同じで、数千とも言うわれる湖が国全体に散らばっている。世界で最も水が綺麗な国の1つとしても知られている。

 この国は、常に、大国の思惑に翻弄されてきた歴史を持つ。12世紀から19世紀初頭までの700年弱スウェーデンの支配下にあり、その後100年ほどはロシアの支配下にあった。

 このため、この2つの国との経済的結びつきは今でも深いが、心情的には、愛憎相半ばするものがあるようだ。実際、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーの北欧3カ国は、スカンジナビア航空を設立したが、フィンランドはこれに参加せずにフィンランド航空を作っている。

地図

「知の力と楽しみ」を教える教育

 最近、日本ではフィンランドの教育制度への関心が高まっている。フィンランドは国際学習到達度調査(PISA)でしばしば第1位に輝く国として、長年にわたって世界中から注目を浴びてきた国だが、地理的に遠いこともあり、比較的最近まで日本ではあまり注目されてこなかった。

 だが、最近では、日本から教育視察団が頻繁に訪れたり、フィンランド・メソッドの本が出版されるなど、「平等な総合教育」をうたうこの国と我が国との心理的距離は日々、狭まっているように見受けられる。

 厳しい気候で夜が長いこともあり、この国の人たちの読書量は世界のトップレベルである。実際、図書館利用率では世界第1位の国であり、「本との対話」が教育の基本にあるという。

 日本の国語教育というのは「この時、主人公はどう思いましたか?」「この時、作者は何を意図したのでしょうか?」などという、伝統的な日本人の心性理解とそれに基づく日本的倫理観の教育に主眼を置いている。

 だがフィンランドでは、意見そのものが正しいかどうかは、教師を含めて誰にも判断できないから、意見そのものを評価対象にしない。その代わり、意見に至るまでの過程や根拠を、いかに説得力を持って説明できるか、が重要な評価対象となる。

 このため、生徒は、自分の意見に至った理由を教師やクラスメートに筋道を立てて説明するトレーニングを自然に積んでいく。「本との対話」が「人との対話」につながる瞬間である。

 実際、フィンランド方式では、論理力、表現力、発想力、批判的思考力、コミュニケーション力などに焦点が置かれており、教科書も、解答を出すためのものではなく、考えるためのツールと考えられている。また、IT(情報技術)や外国語にも力を入れているという。

 教師の質も高い。フィンランドでは、教職は、希望者の1割しか就くことができない、憧れの職業であり、最低でも修士号取得が資格要件となっている。また、日本と異なり、中央からの統制は最低限であり、現場の裁量を重視する制度が敷かれている。しかも、人との競争、つまり相対評価には重きを置かず、生徒一人ひとりの目標達成度によって評価が行われるという。

「ゆりかごから墓場まで」の闇

 日本と比べると、「超」がつくほど充実した福祉国家フィンランド。教育費は無料で、9年間の義務教育期間においては、給食費も無料だという。大学では住居手当なども支給されるという。年金も手厚く、介護医療など様々な医療制度も充実している。

 しかし、光には常に陰がつきものである。まず、フィンランドは、少子高齢化問題とそれに伴う年金問題が急速に深刻化しており、EU(欧州連合)加盟国内では、最も深刻な状況にある国の1つと言われている。

 しかも、この国には、移民がなかなか集まらない。厳しい天候、難解な言語、欧州の辺境、高い個人所得税率など、様々な要因から、外国人労働者を集めにくいという、構造的な問題を抱えている。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官