米国経済はあらゆる経済指標を見ると、2008年前半は急速な失速と言える状態にある。消費動態調査や失業率、鉱工業生産の指標を見る限りは、景気後退と言うよりは低迷、と言う方がふさわしいが。悲観的な見方から企業は投資の中止や人員削減に踏み切り、消費者が財布の紐を固くする可能性がある。そのため、2008年第1及び第2四半期のGDP(国内総生産)の伸び率は、年換算で0.5%に落ち込むだろう。
ただし、伸び率の低下は短期間で、下期には年換算で1〜2%に回復するだろう。直近の経済指標は厳しさが出ているが、FRB(米連邦準備理事会)や議会が講じる景気刺激策はインパクトがあり、その効果は下期に表れてくるはずだ。加えていくつかの要因が、成長率の低下を限定的なものにするだろう。
例えば、企業は資本支出や在庫投資に慎重になっていたことで、過剰在庫や設備を除却し、スリム体質になっている。また景気刺激策の目玉である所得税減税によって、納税者はこの5月または6月にも小切手で還付を受ける。その効果は今年の第3四半期ないし第4四半期に表れる。
貿易面でも、純輸出は明らかに昨年のGDP増大に寄与していた。景気の停滞によるドル安は、今後、貿易収支のさらなる改善をもたらすはずだ。住宅セクターは、この1年を通して弱含みに推移するだろうが、落ち込みは鈍り、それが経済の底上げにつながっていく。
インフレ兆候見えるも、経済の下ブレリスク考慮し利下げへ
世論や政治の影響もあって、FRBは経済を支えていくシグナルをこれまで送ってきた。今後もその動きは変わらず、FRBは3月18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で米国の短期金利の指標であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を50ベーシスポイント(0.5%)調整し、現在の3%を6月までに2%にすると見ている。
こうした見通しは、最近のインフレ統計を見ると、希望的観測かもしれない。1月の消費者物価指数は、いくつかの分野で価格上昇圧力があることが明らかにされ、同時にインフレの兆候が見られた。FRBの幹部には、ゆるやかな価格上昇もしくは政策の安定を求めていく者たちはいる。
とはいえ、大半のFOMC委員は、経済成長の下振れリスクを考慮して、追加利下げを支持すると見ている。委員の中には、不安定になっている金融市場がもたらす影響についての憂慮を示唆するメンバーもいる。
彼らは、財政規律と貸し出し標準の厳格化によって経済活動が低迷し、それによってさらに財政が逼迫する事態を招く「逆フィードバックループ」について言及している。財政状態が今より厳しくなれば、もう一段の景気低迷をもたらす可能性があり、こうした負のサイクルで経済は急速な低下を引き起こしてしまうのだ。
こうした意見を持つFRBの幹部は、インフレの傾向は今年、時がたつごとに改善されると見ている。そうした見解を持つのは、
エネルギー価格が安定する
経済成長の低迷が資源消費を緩和させる
インフレ期待が薄まる ―― という3点からだ。
インフレの主要因は、インフレ期待
こうした見解を持つのは、インフレを引き起こす要素の中にインフレ期待を特に重視しているからで、実際にセントルイス連銀のウィリアム・プールは最近の講演で、インフレ期待がインフレの最も重要な決定要因であると主張した。
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1952年米クリーブランド(オハイオ州)生まれ。80年ペンシルベニア州立大学で経済学博士号を取得。ジョージワシントン大学非常勤講師、FRB(米連邦準備理事会)エコノミストなど経て、87年にアメリカ大和証券に転じ、チーフエコノミストとして米国の金融経済を中心に調査・分析を続けている。the Nikkei Financial Dailyで定期的に執筆するほか、様々なメディアにも登場している。

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