タイの株式市場について、日本のマスコミのインタビューを受ける時、必ず受ける質問がある。「タイの株式市場には何か特徴的な銘柄はありますか?」。この質問には必ず「病院です」と答えている。タイでは当たり前のことなのだが、日本の人からはまず「え、病院が上場!」と驚かれるからだ。
日本では「病院が上場する」ということは、考えもつかない話なのだろう。いまだに保険診療と自由診療についてあれこれ議論がやまない状況を考えると、それも致し方ないだろう。人命を救うことが市場経済の中に組み込まれることを、感情論から拒絶する向きもある。
そうした風土の中で、中進国のタイでは既に病院が上場している話を聞くと、一瞬、狐につままれたようになるのは当然かもしれない。今回は、タイの病院セクターの中で最大の、そして世界的な知名度を高めているバムルンラート病院(BUMRUNGRAD HOSPITAL PUBLIC COMPANY LIMITED、証券コードBH)を中心に、タイの病院セクターについて書きたい。
13の病院が上場
タイの医療セクターには、バムルンラート病院を含め、13の企業が上場している(表)。1980年に設立されたバムルンラート病院は、89年にタイ証券取引所(SET)に上場している。
バムルンラート病院の2007年の業績は、売上高が94億1300万バーツ(1バーツは3.2円で換算 約301億2160万円)、純利益が16億500万バーツ(51億3600万円)、時価総額235億バーツ(752億円)。ROE(株主資本利益率)は42%で、ROA(使用総資本当期利益率)が30.7%ある。
売上高、利益、人株利益、一株配当は2007年12月期決算、それ以外は2008年3月12日時点
*一株配当は直近で一番最後の配当
*ワタナガンペート病院は取引停止中
*アイコル病院、チェンマイメディカルサービスは単独決算、それ以外は連結決算
バムルンラート病院は、上場している病院の中では、売り上げではバンコクドゥシットメディカルサービス(証券コードBGH)の188億8500万バーツ(604億3200万円)に差をつけられているが、純利益では4億バーツほど上回る。バンコクドゥシットメディカルサービスの売上高が大きいのはタイ東部を中心に病院チェーンを展開し、ここ最近もM&A(合併・買収)などで参加の病院数を増やしていることがある。
バンコクドゥシットメディカルサービスは国内拡大路線に対し、バムルンラート病院は、顧客層を国内外の富裕層に絞るなど限定型の拡大路線を取っている。これが2つの病院の売上高と純利益の違いに表れている。
改めてバムルンラート病院の特色を挙げると、まず国際性だ。
同病院は、年間に100万人以上の外来及び入院患者を受け入れている。このうち43万人は世界190カ国からの外国人患者が占めている。医師の数は歯科医師、非常勤医師を含めると900人に上る。
そのうち200人を超える医師が、米国での医師資格を保有している。そのほかにも、英国などのメディカルスクールなどに留学した経験者もいるなど、国際的な教育を受けた人が多い。

日本語ができる医師の
ジュン・スリマタンティポン氏
BHは米国の代表的な病院認定機関で非営利団体のジョイント・コミッション・インターナショナル(JCI)の認定を2002年にアジアで初めて取得して、世界レベルの病院であると認定された。JCIの認定は2005年に更新している。
JCIの認定を得るには350以上の項目を満たす必要があり、これを得ているということが、世界でも高いレベルの医療技術、サービス、衛生、スタッフを揃えているということの証明となっている。残念ながら、日本には今のところJCIの認定を受けた病院はまだない。
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