「ロバート・シラーの「21世紀の新・金融秩序」」

それでも金融技術は必要だ

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2008年3月24日(月)

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 2007年半ばに起きた米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題が引き起こした危機を見て、金融の自由化や金融の技術革新に懐疑的だった者たちが、がぜん勢いづいている。

 はたして、こうした懐疑論者の考えは、正しいのだろうか。我々はサブプライム危機のような事態の再発を防止するために、金融の自由化や金融の技術革新を、ここでもうやめるべきなのだろうか?

金融の技術革新は経済成長にプラス

 サブプライム市場が生まれてからおよそ10年になる。1994年以前には、「サブプライム」という言葉はどんな言語にも存在していなかった。サブプライム市場は、オプション付き変動金利型住宅ローン(オプションARM)や新種の債務担保証券、銀行の簿外の運用組織(ストラクチャード・インベストメント・ビークル=SIV)といったものに拠って立つ、いわば金融イノベーションの産物である。それ以前の米国の個人投資家は、信用履歴が優良(プライム)ではない住宅ローンの借り入れ希望者に対しては、ただ単に金を貸さなかった。

 現在の危機が金融イノベーションにより少なからず誘発された面もあるにはあるが、金融市場の自由化そのものは全体として、経済成長にプラスだったということがはっきりしている。

 例えば経済学者のゲールト・ベカルト氏、キャンベル・ハーベイ氏、クリスチャン・ルンドブラッド氏らが2005年に発表した研究によると、株式市場を自由化した、すなわち政府による干渉をなくして運営面での自由度を高めた国は、経済成長が年平均1%ポイント押し上げられることが分かった。高い成長率には投資ブームを伴う傾向があるが、これは言い換えると、企業にとっての資本コストが低いことによって、投資ブームが推進されるのだ。

質の高い金融市場こそ経済成長の源

 もちろん、複雑な金融取引は経済の成長を促進する一方で、危険をも生む。建設現場にある足場や機材を想像してみてほしい。例えば作業員が機材につまずいたり足場の材料が落ちたりして、時に大惨事につながることがあるが、それと似ている。

 何かを作り上げる時には常に、失敗の可能性がある。だが、失敗のたびに我々は学ぶ。建設現場で事故が起これば、政府や保険会社は安全確保のため義務づける事項について、改善する。金融危機に関しても同じことが言える。

 米国は世界で最も金融自由化が進んだ国の1つだ。その質の高い金融市場こそが、米国が相対的に高い成長を続けてきた重要な理由である。実際、米国の貯蓄率は数十年に及び非常に低く、一方で膨大な財政赤字を抱えてきた。この高品質な金融市場がなければ、米国は深刻な経済危機に直面していただろう。

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著者プロフィール

ロバート・シラー(Robert Shiller) 

ロバート・シラー

金融経済学者。
米エール大学経済学部教授。ミシガン大学卒業後、1972年米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号取得。株価変動やリスクに関する研究の権威。著作に『Irrational Exuberance(根拠なき熱狂)』、『The New Financial Order(新しい金融秩序)』など。
月一回、「Project Syndicate」を通じてコラム配信。



このコラムについて

ロバート・シラーの「21世紀の新・金融秩序」

株価変動研究の権威である筆者が21世紀にあるべく金融の姿を、リスク分析など独自の視点を基に喝破していく。

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