前回(4月4日掲載)は金融機関相手の第三者割当増資による資金調達という「建前」と、買収防衛という「本音」を使い分ける企業行動について書いた。今回は、株式市場から見ると分かりにくい日本的経営の事例を取り上げる。
もともと日本的経営は、1980年代には日本経済の急成長の源泉として評価もされてきた。ところが現在では株式市場から見ると、日本企業の多くは経営効率が低いと見られている。例えば、日本企業は余剰資金を多く抱えて、あまり増配や自社株買いをせず、株主から預かった資本を不効率に使っていると映る。ある企業コンサルタントは、こうした日本的経営が結果的に市場の評価を下げてしまう企業の内幕を明かしてくれた。
株主還元に踏み切れない企業の内幕
このコンサルタントが出会ったという歴史の長いある上場メーカーは、国内外に複数の事業部を持つ。海外の事業は、主に国際部が仕切っている。国際部は、海外拠点が抱える案件にどういうリスクがあるか把握し、各国で異なる税制への対応方法や、いざ資金が必要になった時に備えて海外に置いている資金も管理している。
しかし国内にある本社の経営企画部は、現在海外に資金を置いておく必要はないので本社に還流したいと考えている。余剰資金を抱えすぎている企業は、投資家から株主への利益還元を要求されやすい。それだけに、まじめに株主還元を考えたい。
ところが、国際部には一度自ら稼いだ資金は自分のものという意識が強い。自らの資金なので、いま何が海外で大きなリスクなのかも明らかにしたがらない。そんな理由で、海外部などの事業ラインと本社の経営企画部門は、そりが合わない。
それぞれのラインから昇進した経営陣は、この問題に踏み込めない。かくして株主に還元されるべき資金は企業に眠ったまま。株式市場から見れば、経営の不効率さとして株価を押し下げる要因になる。
恐らく企業の社内政治では、こうした事態は仕方のないことかもしれない。日本企業は経営陣のトップダウンよりも、各部門の意向が強く働く傾向がある。だがそれは、市場から見れば不合理に映る。
複雑すぎるキリンと協和発酵の経営統合
とりわけ不合理さが噴出して株価が下落する事態が目立つのはM&A(合併・買収)だ。最近の株式市場で話題になったのは、キリンホールディングスが協和発酵工業を傘下に収めることで合意したという発表だ。
もともとこの計画について発表があったのは昨年10月。だが、その内容は単純にキリンが協和発酵を買収するというものではなかった。
まずキリンがTOB(株式公開買い付け)を実施して、協和発酵の株式を1株1500円で27.95%を取得。
次に2008年10月に協和発酵とキリンの医薬品事業を統合する目的で、TOB成立後にキリンの医薬品子会社であるキリンファーマ1株に対し協和発酵の株式8862株を割り当てる。
つまり、キリンとキリンファーマの2社で、協和発酵を“買収する”というわけだ。
この内容はさらに追加条件もある。
次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。









