「知られざる欧州の素顔」

スロバキア:
技術者と税優遇で東欧のデトロイトに

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2008年4月24日(木)

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スロバキアの国旗

スロバキアの国旗

 1989年に無血のビロード革命で共産主義と決別したチェコスロバキアは、93年にチェコとスロバキアに分離した。チェコとスロバキアは同じ国だったので、両国は近い関係にあると思うかもしれないが、今は必ずしもそうではない。

 例えば、スロバキアの首都ブラティスラバからチェコの首都プラハまでは、300キロ以上もある。一方、ブラティスラバから、オーストリアの首都ウィーンまで、わずか60キロしか離れていない。首都の距離だけでは何とも言いにくいが、スロバキア人にとってはチェコよりオーストリアの方が近いと感じる部分もあるだろう。

スロバキアの地図

 スロバキアは2004年にEU(欧州連合)に加盟している。EU加盟は、ソ連が崩壊した1991年から準備を整え始めた。当時のチェコスロバキアは、ハンガリーとポーランドの3カ国で、EU加盟に向けて協力団体(ヴィシェグラード・グループ)を結成している。

 その後、チェコとスロバキアの分離に伴い、2004年に揃ってEU加盟を果たした。そして、今、来年1月1日から、スロベニアに続き、東欧で2番目の欧州通貨同盟(ユーロ圏)に参加できるかが、焦点となっている。

 スロバキアは、コソボ独立の際、スロバキア議会が即座に独立を承認しないという決議をした。それは、国内に住むマジャール人(ハンガリー人)たちの存在がある。

 スロバキアはかつてハンガリー王国の一部だった関係で、今でも人口の10%ほどのマジャール人が国内に住む。スロバキア政府としては、コソボ独立で、ハンガリー系の独立の気運が高まることを恐れたのであろう。

兵器製造で鍛えた技術力を自動車製造に

 スロバキアの2007年のGDP(国内総生産)成長率は8.8%とも言われ、経済は絶好調である。その背景には、海外自動車産業の誘致に成功したことが1つにある。

スロバキアの主な経済指標の推移

 スロバキアにはドイツのフォルクスワーゲンやフランスのプジョーシトロエングループ(PSA)や韓国の起亜自動車が生産拠点を設けている。PSAの生産能力は、2003年に年間45万台、起亜自動車は2004年時点で30万台となっている。

 チェコスロバキア時代は、チェコ側は工業国として栄えていたが、スロバキア側は、農業中心の低開発地域と見られていた。その国が、なぜ、自動車産業の誘致に成功したのか。

 実は、スロバキアは、地理的に旧ソ連側にあったこともあり、冷戦時代、西側の脅威からより離れているなどの理由で、国営軍需工場をはじめ重工業製造拠点が多数置かれていた。

 ソ連崩壊後は、こうした国営企業の民営化に伴い、大量の失業者を生んだ。しかし、別な見方をすれば、スロバキアには、優秀な労働力を容易に確保できる土壌があったことになる。

 ソ連時代に培われた機械工学のノウハウは、大学等の教育機関や年輩の労働者の中で温存され、新しい世代に継承され、今では質の高い技術者が採れる国としても知られている。

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著者プロフィール

スティーブ・モリヤマ

英国勅許会計士(FCA)

スティーブ・モリヤマEU(欧州連合)の首都ブリュッセル在住の作家兼外資系ビジネスマン。ロシアを含む欧州28か国で日系企業に進出・再編指南を行う。著書は訳書を含めると10冊を数え、近著に『拡大欧州の投資・税制ガイド』(中央経済社)『日系企業のためのロシア投資・税務会計ガイドブック』(中央経済社)や『人生を豊かにする英語の名言』(研究社)、『ユダヤ人成功者たちに秘かに伝わる魔法のコトバ』(ソフトバンク)などがある。本人のウェブサイトはこちら



このコラムについて

知られざる欧州の素顔

環境、会計、品質そして通貨――。今や、様々な分野で欧州の存在感が増している。欧州の動向を知らずして、ビジネスで大きな成功を収めることは難しいといっても過言ではない。その欧州もEU(欧州連合)のみならず、日本にとってなじみの薄い国々でも、大きな変化が起きている。米国や昨今は中国に目が向きがちな日本人に、変貌する欧州の姿をお届けする。

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