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カンピオーネ・ディタリア:
スイスの中にある外国の正体

  • スティーブ・モリヤマ

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2008年6月5日(木)

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 「飛び地」というと、日本人にはなかなかイメージしにくいのだが、世界には、ある国の領域の中に別の国がポツンと存在するケースが少なからずある。有名な飛び地としては、ロシアのプーチン大統領夫人の出身地カリーニングラード(リトアニアとポーランドに挟まれたロシア領)や米国アラスカ州などが挙げられよう。

 イタリアのミラノから車で1時間ほどのところに、ルガーノというスイスの街がある。多数のプライベートバンクが集積する南スイスの金融街である。この街から車で15分ほど行くと、ルガーノ湖の対岸にイタリアの飛び地、カンピオーネ・ディタリアがある。国境もパスポートチェックもなく、いつの間にかイタリアに逆戻りするわけだが、写真のような門が訪問者を黙って迎えてくれる。

カンピオーネの地図

 8世紀にイタリアの修道院の領地になり、以来、周囲の国境線は何度となく変わったが、この地だけは、ずっと飛び地としてひっそりと生き延びてきた。この地の法律はイタリア法に準拠するが、経済的には、完全にスイスに依存している。

 通貨も、むろんユーロも使えるが、基本的にはスイスフランが通常用いられ、電話回線もスイステレコムが提供している。また、車両登録も基本的にはスイスで行う者が多く、郵便番号はスイス(CH-6911 Campione)又はイタリア(IT-22060 Campione d'Italia)のどちらを用いてもよい。

 居住用の土地はわずか1平方キロメートル程度しかなく、このため不動産価格は高騰気味だという。地元の不動産屋に聞いてみたところ、湖の見えるアパートの場合、1平方メートル当たり8000~1万2000スイスフランほど(約80万8000~121万2000円)だという。

タックスヘイブンは伝説だった

カンピオーネの旗

カンピオーネの旗

 インターネットなどでカンピオーネを検索すると、「タックスヘイブン」という文字が出てきて、「個人所得税はゼロ」と出てくるが、実はこれは間違いである。

 先述の通り、この地では、イタリアにもかかわらず、基本的にスイスフランが用いられるのだが、課税権はイタリアにあり、税務申告も当然イタリアの通貨であるユーロ建てで行われる。面白いのは、ここの住人の特権として、税務申告上、スイスフランからユーロへの換算に際し、特別な為替レートの使用が認められている点だ。この特別レートは実勢レートより2割程度、納税者に有利になるように設定されている。

 この地には、基本的に商店はほとんど存在しないため、皆、スイスかイタリアで買い物をするのだが、この地に住む事業主は、必ずイタリアで事務所用の物品やサービスなどを購入し、隣のスイスでは買わないという。なぜなら、イタリアでは費用が自動的に8掛けになるので、スイスで費用を発生させると税務上非効率だからである。よって、わざわざイタリアまで行って費用を発生させる。すると、売り上げ(益金)は8掛けで計上され、費用(損金)は100%計上されるので、課税所得は効率的に圧縮される。

 イタリア当局も、この地に住むイタリアの納税者が少ないため、恐らく費用対効果の観点から、あまり厳しい税務調査を行わないようである。実際、わざわざスイスの国境を通って、この地で税務調査を行うのは非効率であろう。

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