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世界的インフレを抑える主役は誰か

2008年6月5日(木)

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 FRB(米連邦準備理事会)のバーナンキ議長は、6月3日の講演でドル安の行き過ぎを牽制する発言を行った。過去10年以上、FRB幹部は基本的に為替相場に関して言及しない姿勢をとってきた。為替政策の第1の責任者は、米財務省だからである。このため、3日の発言はかなり意外感のあるものだった。昨年秋以降の金融緩和局面では、FRBはドル安が輸出や国内観光業を下支えしている効果を認めてきたが、ここにきて、輸入物価の上昇を懸念せざるを得なくなってきたようだ。バーナンキ議長は次のように語った。

 「我々はドルの価値の変化が、インフレやインフレ予想に及ぼす影響に用心深くなっている。我々は“2つの使命”(雇用の最大化と物価の安定のこと。5月29日付けコラム参照)に対するリスクを防ぐために政策 を形成し続けていくつもりだ。そのリスクは、長期インフレ予想を脅かすリスクも含んでいる」

 5月30日に発表されたミシガン大学/ロイター調査の長期(5~10年先)のインフレ予想は3.4%へ上昇した。12年ぶりの高さだった2週間前発表の3.3%を更に上回ってしまった。この数値はFRB幹部にインパクトを与えたようだ。

 ECB(欧州中央銀行)幹部も、このところインフレ警戒を強める発言を繰り返している。2002~03年にかけては、デフレを真剣に心配していた中央銀行が多かったのに、急激な変化である。

 IMF(国際通貨基金)のデータを使って、過去40年弱の世界のインフレ率(消費者物価指数前年比)の推移を鳥瞰してみよう。先進国のインフレ率は1960年代終わりから73年初めまでは4~6%で安定的に推移していた。

世界のインフレ率(CPI)

 しかし、2度の石油ショックの余波で74年に16%、80年に14%の高インフレを見せている。その後は、一時的な上昇局面(90年11月に6%へ上昇)を除けば、2007年8月まで長期ディスインフレ傾向が続いていた。1998年以降は1%台のインフレ率が度々見られている。

 一方、発展途上国のインフレ率は、72年夏までは1ケタ台だったが、その後は急騰した。85年に45%、88年に68%、90年に88%、94年に76%のピークを記録している。しかしながら、90年代後半以降は発展途上国においてもインフレ率の劇的な低下が見られた。このため、2003年春から2007年夏にかけて、世界のインフレ率は3%台で推移していた。

 1990年代後半以降の劇的なインフレ率の低下は、何が原因だったのだろうか?

 FRB(米連邦準備理事会)のクロズナー理事が、2006年11月と2007年5月に金融政策との関連でそれに関する講演を行っている。同理事の解説のポイントを以下にピックアップしてみた。

グローバリゼーション、金融改革、規制緩和の3点セット

 1970年代初期にブレトンウッズ体制が崩壊した頃から、インフレ率の上昇は世界的な傾向となった。しかし、10年以上前から先進国やアジアのエマージング諸国では、長期インフレ予想が5%を下回るようになった。(かつてハイパーインフレだった)アルゼンチンですら最近(講演当時)の長期インフレ予想は7%前後である。

 世界的にインフレが落ち着いた背景として、グローバリゼーション、規制緩和、金融革新が挙げられる。それらは通貨間のグローバルな競争を促した。その結果、各国の財政当局が財政政策のファイナンスのために中央銀行を「豚の貯金箱」(安直な資金供給源の意味)として利用する動機が低下した。

 政府が財政支出を紙幣の印刷で賄おうとすると、インフレ率は上昇し、「インフレ税」として知られる資産の減価が生じる。しかし、グローバリゼーション、規制緩和、金融革新の下では、政府がそのような「インフレ税」を課そうとすると、市民は容易に富を海外へ流出させてしまう。

 電子決済、トレーディングシステムの進歩、運用対象の多様化は、消費者、投資家、銀行らが、彼らの通貨や資産を低コストかつ迅速にインフレリスクから避難させることを可能とした。「インフレ税」は課税ベースの縮小を招くため、政府はそのような政策を選択できなくなっている。結果的に、発展途上国も含めた多くの中央銀行の独立性が高まり、財政当局の金融政策に対する支配が低下してきている(中央銀行の独立性がある程度確保されている国には、海外から投資資金が流入しやすい)。

 また、低インフレの継続に市場が自信を持てば、イールドカーブ(金利曲線)の傾斜は世界的になだらかになる。さらに、インフレの克服は、債券の発行期間の長期化を可能とする(激しいインフレの国の長期国債は怖くて誰も買えない)。2000年以降、ブラジル、チリ、コロンビア、インドネシア、メキシコで10年国債が現地通貨建てで発行できるようになった。

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「世界的インフレを抑える主役は誰か」の著者

加藤 出

加藤 出(かとう・いずる)

東短リサーチ社長

1965年生まれ。88年4月東京短資入社。2013年より現職。国内外の短期金融市場の現場の視線から金融政策を分析している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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