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ルクセンブルク:変身続けるEUの最古参

  • スティーブ・モリヤマ

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2008年6月19日(木)

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ルクセンブルグの国旗

ルクセンブルグの国旗

 ドイツ、フランス、ベルギーに囲まれたルクセンブルク大公国は、実に美しい国である。特に、首都から少し離れた谷間の街、ヴィアンデンは独特の雰囲気が漂い、丘の上にそびえ立つ古城を眺めながら飲むコーヒーは格別な味がする。

 筆者は疲労困憊状況に陥ると、ただそれだけのためにこの街を訪れることがある。むろん、ベルギーからルクセンブルクに入国する際、パスポートコントロールはない。この国の小さな街であるシェンゲンで1985年に結ばれたシェンゲン協定に、双方の国とも加盟しているからだ。

ルクセンブルグの地図

 この国の歴史を振り返ってみると、変身の連続であることが分かる。蝶は、幼虫から蛹、成虫と2回の大変身を経て一生を終えるが、この国の場合、成長してからも、既に2回も大変身を遂げ、輝き続けている。

 EU(欧州連合)の前身の欧州鉄鋼石炭共同体(本部:ルクセンブルク)のメンバーだったルクセンブルクは、その情報力や地の利を利用して、1960年代から鉄鋼業を産業の柱に据えて著しい経済成長を成し遂げた。

 ところが、石油危機により第1回目の「大変身」を強いられ、産業構造の抜本的改革を行った。その結果、優遇税制や銀行秘匿法など、金融機関に有利な市場インフラを整え、金融立国に成功し、その後長らく欧州の金融センターとして栄えてきた。今でもこの国には200以上の金融機関が存在する。

2回目の変身

 2回目のメタモルフォシス(大変身)の契機になったのは、2003年6月だ。この月に、これまで本稿(チャンネル諸島など)でも何度か触れてきたEU貯蓄課税指令が採択されたのだ。同指令の趣旨は、基本的に、預金者が非居住者である場合、その国の税務当局と預金者情報を共有するなど、脱税やその他犯罪の防止を目的とした透明化だ。

 ルクセンブルクは預金者の情報を公開しない銀行秘密保持法を持ち、また利子源泉税率を0%にすることで、ドイツやフランスの近隣国はもとより、欧州外の富裕層の預金場所として有名だった。このため、ルクセンブルクの銀行界は、このEU指令の採択を強硬に反対してきた。しかし、最終的にはやはりEU加盟国として同意し、2005年に他のEU加盟国同様、国内法に導入した。

 これまでの記事でも紹介してきた通り、EUは貯蓄課税指令で「妥協」という名の伝家の宝刀を抜いた。原則は、情報共有だが、それを行わない場合は代わりに源泉税を課すという代替案を容認した。

 この結果、ルクセンブルクのように、もともと預金利子に源泉税をかけない国であっても、2005年7月から今年の6月までは15%、2008年7月からは20%、2011年から銀行預金に35%の源泉税を利子に対して課すことになったわけである。

妥協の巻き返し図る欧州委員会

 また、現行規定では預金者(個人)のみが対象だが、信託や財団あるいは法人形態を用いてこの規定を回避する者が多いことから、欧州委員会は現行の規定の対象を拡大すべく検討を重ねている。

 この背景には、真相は不明だが、毎年5兆円以上にも上る税収を脱税で失っているという、大国ドイツの主張が関係しているのだろう。現在、ルクセンブルクは現行規定の改正に強く反対している。

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手嶋 龍一 作家・ジャーナリスト