主要国の金融政策は際どいフェーズに差し掛かっている。
米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題を起点とした短期金融市場の大混乱が始まって来月で1年が経過する。この間、多くの国のインターバンク市場で、3カ月物や6カ月物といったターム物の取引などで、カネの流れがフリーズする異常事態が生じた。各国の中央銀行は様々な流動性対策を導入してきたが、市場の混乱は続いている。
四半期末として注目された6月30日の米国の短期金利の指標であるFF(フェデラルファンド)金利は、予想を超える大荒れの展開を見せた。FRB(米連邦準備理事会)の現在のFF金利誘導目標は2%だが、市場での取引は一時3.7%まで跳ね上がった。
一方、多くの先進国の中央銀行は、景気減速を警戒しつつも、インフレ抑制に傾き始めている。1970年代の石油ショック後の対応に失敗したと後悔している中央銀行は、過ちを繰り返さぬため、自国民のインフレ予想の高騰を早期に阻止する必要を感じている。
金融システムとマクロ経済の問題を分離
彼らは金融システムの問題とマクロ経済の問題を分離して政策運営を進めたがっている。ECB(欧州中央銀行)は7月3日に政策金利の引き上げを決断する見込みだ。しかしながら、金融市場の混乱は続いているだけに、中央銀行の先行きには「棘の道」が待っていると思われる。
以下、主要中央銀行の流動性対策と短期金融市場の現状について論点を整理してみよう。短期金融市場におけるストレスの度合いを知ることは有用と思われる。今年4月後半から5月にかけて株式市場などでは金融システム問題に関して楽観論が広がった。
しかし、LIBOR(ロンドン銀行間取引)とOIS(一定期間の日々の予想オーバーナイト金利と確定したオーバーナイト指標金利を交換する金利スワップ取引)スプレッドなどは、その間も厳しい状況を示し続けていた。結果的に、短期金融市場から発せられていたシグナルの方が正しかったと言える。
昨年以降、FRBは、TAF(ターム物入札方式資金供給)、28日物MBSレポ(担保をモーゲージ担保証券に限定する資金供給)、PDCF(大手証券会社向け常設貸出制度)など非常時対応の流動性対策を急増させてきた。ディスカウントウィンドウ(銀行向け常設貸出制度)の適用金利も引き下げた。また、ECBやスイス国民銀行がドル資金供給を行うために、それらと為替スワップを行っている。
TSLFという証券会社向けにモーゲージ担保証券などを担保に国債を貸し出す制度も導入された。3月にはベアー・スターンズの個別救済にも乗り出している。
FRB資産全体の半分近くを流動性対策に投入
FRBの流動性対策の総額は、6月末近辺時点で4125億ドル(約43兆円)に達した。FRBの資産全体に対する比率は5割弱にもなる。凄まじい規模だ。金融システムに資金繰り上の巨大な「生命維持装置」を取り付けたような状態と言える。
昨年6月末は、FRBの資産の9割以上を米国債が占めていた。しかし、現在は金融機関向け貸し出しが急増している。FRBが担保として受け入れているものの中には、信用度が劣り、市場で換金しにくいものも含まれている。
ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



1965年生まれ。88年4月東京短資入社。2002年2月より現職。国内外の短期金融市場の現場の視線から金融政策を分析している。主な著書に『






