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米財政再建、まずルール作りから

実績残した「PAYGO原則」は過去のものに

  • 安井 明彦

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2008年8月22日(金)

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 米国の財政赤字が再び拡大に向かっている。米国の財政赤字は、2004年度の4130億ドルをピークに、2007年度には1620億ドルにまで減少していた。しかしブッシュ政権は、7月末に発表した最新の見通しで2008年度の財政赤字が3890億ドルに拡大すると予測。さらに2009年度の財政赤字は史上最高の4820億ドルに達するとした。

 2009年度の財政赤字額はブッシュ政権の予測以上に膨らむ可能性がある。ブッシュ政権の予測にはイラク戦費が完全には織り込まれておらず、先に成立した住宅対策法案の影響も見込まれていない。2009年に誕生する新政権にとっては頭の痛い問題になりそうだ。

財政赤字の拡大にかける歯止めなし

 新政権にとって悩ましいのは、米国の財政を健全化させるためにこれまでは有効だった「財政ルール」に弊害と限界が目立ち始めているという事実だ。

 問題の財政ルールとは「PAYGO原則」と呼ばれるものである。減税や義務的経費(注1)の拡大を伴う制度改革を実施する場合に、それに見合う財源確保を義務づけるというルールだ。1991年に導入されたこのルールは、1990年代の財政黒字化に貢献したと評価されている。最近では、2006年に上下両院で議会の多数党を獲得した民主党が、ブッシュ政権下で緩んだ財政規律の立て直しを主張し、そのツールとしてPAYGO原則の遵守を主張している。

(注1)「義務的経費」とは、公的年金や医療保険などいったん法律で制度が決まれば自動的に各年度の歳出額が決まる経費。これに対して、毎年法律による予算措置が必要な経費は「裁量的経費」と呼ばれる。

 もっとも、上述のように足元では米国の財政事情は悪化している。むしろ民主党議会の下ではPAYGO原則の弊害が目立っている。PAYGO原則へのこだわりが、政策運営の硬直化を招いているのである。

エネルギー減税延長が露呈した政策運営の硬直化

 好例がエネルギー減税延長のもたつきだ。米国は、風力などの再生可能エネルギーを対象とした優遇税制を実施している。現在の優遇税制は今年末で期限切れとなる。このため、関連業界は早期の延長決定を求めている。税制の先行きが不透明なままでは投資の決定などに支障が出るからだ。

 にもかかわらず、米上院は延長法案の採択に4回も失敗している。障害となっているのが、ほかでもないPAYGO原則なのである。

 米国には再生可能エネルギーの開発を重視すべきだという点で超党派の合意があるし、優遇税制の規模は5年間で26億ドル程度に過ぎないので財政規律の大問題にもならない。優遇税制の延長は、エネルギー政策の観点でも、財政への影響という点でも、特段の問題があるとは言い難い。

 しかし民主党は、「PAYGO原則遵守」を党是として掲げている立場上、優遇税制を延長する条件として財源確保を主張せざるを得ない。だが、財源をどこに求めるかという点で共和党となかなか合意できないのである。両党ともエネルギー減税には前向きなのに、財政再建を巡る姿勢の違いを明確にしようとすればするほど政策実現から遠のくのである。

オバマにとってもマケインにとっても邪魔

 新政権にとっての問題はさらに深刻である。PAYGO原則を遵守すると公約が実現できない可能性が高くなるからだ。

 焦点は2010年末に期限切れとなる“ブッシュ減税”の延長である。程度の差こそあれ、民主党のオバマ候補と共和党のマケイン候補はブッシュ減税の延長を提案している。PAYGO原則に従えば、減税の延長には巨額の財源が必要である。具体的には、ブッシュ減税の全面延長を求めるマケイン候補で約2兆ドル(2009~2018年度の10年間)、中低所得層に限った延長を主張するオバマ候補でも約1兆2000億ドル(同)を確保しなければならない。

 加えてオバマ候補は、ブッシュ減税の高所得層向け部分を延長しないことで、医療制度改革に必要な費用を捻出するとしている。しかし、PAYGO原則に則ればブッシュ減税の廃止は規定路線であり、医療制度改革には別の財源を探さなければならない。さらに両候補は、イラク戦費の削減で浮いた経費をブッシュ減税以外の減税に充てるとしている。しかし戦費は裁量的経費であり、従来のPAYGO原則に則ればその削減は減税の財源になり得ない(注2)。

(注2)PAYGO原則における財源の確保は、歳入と義務的経費の枠内に限定されている。

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