今年の世界の株式市場は金融不安が頭をもたげ、低調なところが多いが、ベトナムは別世界のようだ。ホーチミン証券取引所のVN指数は今年6月20日に大底を打った後、8月27日までの2カ月余りで実に54%の上昇を見せている。これで年初からの下げ幅の3分の1を戻した。
それでも年初と比べて40%ほど安い水準なのだが、今は世界で最も勢いのあるマーケットと言える。ちなみにこの2カ月間で、世界84市場のうち、値上がりしたのはベネズエラの9%高をはじめ9市場しかない。逆に地政学的リスクが台頭したロシアは34%安、ウクライナも28%安など、東欧圏を筆頭に下げる市場が圧倒的に多い。

未熟な環境
ベトナム株は2006年に株価が2.4倍上昇したものの、2007年以降は極度のインフレと貿易赤字の拡大で経済は曲がり角に入り、株価も未曾有の下げを見せた。昨年11月、世界銀行は相場に変調が見え始めたアジア市場について金融報告をまとめ、その中でベトナムについては強い相場を維持するためには、ディスクロージャー(情報公開)の強化、投資家保護の改善、海外投資家に対する規制が必要と指摘した。

世界銀行が世界178カ国・地域の株式市場について投資家保護の度合(満点は10.0)を調査したところ、ベトナムは情報公開レベルが81位と中位だった。四半期決算の導入やホームページの作成など、この1〜2年で目覚ましい改善が見られたのだが、役員の責任や株主からの要求実現度の点で著しく劣り、総合的に見て178カ国中165位だった。
ベトナムは未熟なマーケットである、という指摘だ。ちなみに日本は13位、最低はアフガニスタンで、点数は0.7とほとんどゼロに近い。ベトナム株にとって極めつけは、今年5月28日、米大手投資銀行モルガン・スタンレーが「ベトナムは通貨危機に向かっている」、とのショッキングなリポートを発表したことだ。
投資は衰えない
その後1カ月もたたないうちに株価は反転したわけだが、何が起こったのか。6月から7月にかけてベトナム経済に関して報道されたことを振り返る。
・ 6月19日 格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が「ベトナム経済は減速しているが、通貨危機は回避できる」と発表。
・ 同22日 2008年1〜6月の海外直接投資(FDI)が前年同期比7.9倍の309億ドルに急拡大と発表。
・ 同24日 大和証券がベトナムの証券会社最大手で上場企業のサイゴン証券に10%出資すると発表。
・ 7月24日 7月のCPI(消費者物価指数)が前月比では1.13%の上昇と今年に入って一番低い伸びにとどまる。
その後、世界最大の新興国株投資ファンドのテンプルトン・アセットマネジメントを運営するマーク・モビアス氏が「ベトナムは若い市場だが、可能性は非常に大きい」とコメント、ホーチミンに駐在員事務所を設立することを発表した。
歓喜を呼んだガソリン価格の値下げ
さらに、8月25日、8月のCPIが前月比1.56%増と事前予想の2.00%以上をかなり下回る結果になった。食料品上昇率が7月の1.33%から0.53%に、衣料品も1.04%から1.00%低下した。ベトナム統計局では「ガソリンの値上げがなかったら上昇率は1%以下だった」とのコメントを発表している。
この一連の動きから、ベトナムは経済への懸念にもかかわらず海外の企業や投資家の期待が揺るいでいないこと。また、一番の懸念材料だったインフレがピークアウトしつつあり、経済に対する悲観論も弱まり始めたことがうかがえる。さらに、ベトナム市民が沸き立つことがあった。
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(株)BRICsプラス11経済研究所 所長







