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検察頼りの日本の株主

2008年9月8日(月)

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 8月初頭に米ヤフーが開いた株主総会で、最高経営責任者(CEO)のジェリー・ヤン氏らが取締役として再任された。同社経営陣は米マイクロソフトによる買収提案を拒否し続けたが、取りあえずは株主の信任を得た格好だ。

 日本ではほとんど報道されることはなかったが、ヤフーの取締役会は同社株を保有する公務員年金基金からクラスアクション(集団訴訟)を起こされていた。デトロイト市の警察官・消防士退職年金基金と同市の一般職員退職年金基金が原告で、訴えの根拠は「買収提案を拒否し、取締役としての受託者義務に違反した」だった。

 経営上の判断ミスで株価が急落し、株主が損害を被る。こんな時、米国では株主は訴訟を起こして損害を取り戻そうとする。司法の場で戦えば勝つ可能性もあるからだ。一方、日本では株主が訴訟を起こすことはまずないし、仮に訴訟を起こしても勝つ可能性は限りなくゼロに近い。

 というのは、日本の株主は検察頼りだからだ。自力で証拠を集めて立証することができない。裁判で企業側にとって不利に使われかねない取締役会議事録の開示を求めたところで、企業側から門前払いされるだけなのだ。つまり、企業側が犯罪に走るなどで刑事事件に発展しない限り、情報面で不利な立場に置かれる。

 刑事事件になれば、検察が公権力を使って強制的に証拠を集め、裁判を通じて一般に公開する。そうなれば、株主は証拠集めで苦労しないで民事訴訟を起こせる。検察頼りになるのは、裁判所が企業側に証拠を開示させる「証拠開示制度」が欠けているからだ。

 これまで日本で起きた株主訴訟はほとんど例外なく刑事事件絡みだ。例えば日本で最も頻繁に起きる株主訴訟である株主代表訴訟。大和銀行ニューヨーク支店の巨額損失事件や三菱自動車のリコール(無料回収・修理)隠し事件をはじめ、すべて刑事事件を受けて起きたものだ。

 このコラムの8回目「『だまされても救われない』日本の投資家」でも触れたように、株主による損害賠償訴訟も起きにくい。これまで数えるほどしか起きておらず、株主側が最終的に勝訴したケースは1つもない。2004年12月施行の改正証券取引法(現金融商品取引法)によって、以前よりも株主は損害賠償訴訟を起こしやすくなったにもかかわらず、である。

 補足しておくと、株主代表訴訟は株主による損害賠償訴訟とは別物だ。前者は「会社が損害を受け、取締役に対して損害を会社へ返還させる」訴訟であり、後者は「株価下落で株主が損害を受け、株主が自らの損害を取り戻す」訴訟だ。米国での株主訴訟について、日本では新聞報道も含めて両者がごっちゃにされ、区別が曖昧にされることが多い。

 ちなみに、米国では株主訴訟と言えば通常は株主による損害賠償訴訟のことであり、多くはクラスアクションに発展して巨額訴訟になる。「デリバティブ訴訟」と呼ばれる株主代表訴訟は一般には馴染みがない。

西武鉄道とライブドアの2件

 日本ではなぜ株主による損害賠償訴訟も起きにくいのか。やはり検察頼みだからだ。過去数年を見ると件数は2件だけ。西武鉄道とライブドアに対する損害賠償訴訟だ。いずれも有価証券報告書の虚偽記載事件として東京地検特捜部が摘発したケースである。

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