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世界に蔓延する「不誠実」のコスト

  • ロバート・シラー

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2008年9月16日(火)

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 それは新たな楽園――。

 米国政府はファニーメイ(連邦住宅抵当公社)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)を公的管理下に置くという決定を下した。この施策は、損失が拡大している2社の債権者に対する巨額の資金援助と言える。

 2社の負債は政府によって完全に保証されていることから、米国の納税者は2社の債権者が資本不足に陥った場合、不足部分のすべてを補填させられることになる。世界で最も資本主義国家らしいと自認する米国で、なぜこのような救済策が行われるのだろうか。

 伝統的な資本主義の原則に従えば、不動産バブルを信じて住宅金融公社に投資した者は、生じた損失を負う義務があるはずだ。罪のない納税者たちが彼らの尻ぬぐいをさせられるのは、果たして公平なのか。

問題が世界に波及するのを抑制するコストは

 この問いに対する答えは、現在進行中のこの金融危機で、道義的な問題とは何かがはっきりすれば、おのずと明らかになるだろう。しかし、それが不明確なのである。

 問題なのは、金融セクターや世界経済にダメージを与えるのを防ぐために、米国の納税者がどれだけの負担を強いられるのか不明瞭なことだ。2社の経営難が経済全体に与える影響を量的に把握するのは難しい。だからといって影響がないということではない。

 2社が発行した公社債には、一般に米国政府の保証が付いているという暗黙の了解がある。しかし実際に公的な保証がなされているわけではなく、もし政府が保証できなかったら国債や、同種の債券の信用は吹き飛んでしまうかもしれない。これは米国経済を遙かに超えた問題である。

 世界経済はここ数年に起きた不動産投機ブームの崩壊によって信頼や信用、平等の面で崖っぷちに立たされている。多くの国で起きていた不動産バブルは今や終わりを迎えつつある。各国は米国経済が現在経験しつつある痛み、及び道義的ジレンマに直面することになるだろう。

株式市場もバブル崩壊

 問題が起きているのは、住宅市場だけではない。株式市場も同様だ。上海総合指数は2005年から2007年の間に実質5倍の水準になったが、その後あっという間に3分の2の価値を失ってしまった。インドのSENSEX指数も2003年から2007年にかけて実質5倍になったが、それから3分の1の価値を失っている。同じようなバブル崩壊現象は多くの国で起きているのだ。

 投機ブームは各国経済をオーバーヒートさせ、そして今や急激な反動を迎えている。信用の低下が世界経済をのむ込み、世界をリセッションへと向かわせつつある。こうした事態を食い止めるには、市場を守るのではなく、不公平の問題を解決する資金援助の選択が求められている。

コメント3件コメント/レビュー

> 昔からある難題に、「誠実(good faith)」についての問題がある。経済学は人々が「誠実」であるという前提のうえでのみうまく機能するということだ。「えっ?! そうだったの?」と逆にびっくりです。「人間は不誠実である。だから、貨幣が持つ『信用』のみが正しいのだ」というのが、経済原則とばかり思っていましたから。> 投機ブームが世界中に広がり、それが崩壊してリセッションに向かいつつある今の状況は、特定の投資行動をあおる人々によって、経済全体に不誠実がはびこる状況になっていることを示唆している。楽して儲けようったってそうは問屋は卸さない。> それはどのくらい公平であると言えるだろうか。「不公平を前提にして資本主義社会というものが成り立っている現実」をなんで見落としているんだろう。> 我々は今、資本主義が各国の経済を変えてしまう力を持っていることを理解している。しかし、資本主義は「誠実さ」に依拠した仕組みであり、不公平な取り扱いは経済成長に死をもたらすだろう。「不誠実さ」に依拠した仕組みなのに……。なんて能天気なコメンテーターなんだろう、と思っちゃうのです。(2008/09/16)

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いただいたコメント

> 昔からある難題に、「誠実(good faith)」についての問題がある。経済学は人々が「誠実」であるという前提のうえでのみうまく機能するということだ。「えっ?! そうだったの?」と逆にびっくりです。「人間は不誠実である。だから、貨幣が持つ『信用』のみが正しいのだ」というのが、経済原則とばかり思っていましたから。> 投機ブームが世界中に広がり、それが崩壊してリセッションに向かいつつある今の状況は、特定の投資行動をあおる人々によって、経済全体に不誠実がはびこる状況になっていることを示唆している。楽して儲けようったってそうは問屋は卸さない。> それはどのくらい公平であると言えるだろうか。「不公平を前提にして資本主義社会というものが成り立っている現実」をなんで見落としているんだろう。> 我々は今、資本主義が各国の経済を変えてしまう力を持っていることを理解している。しかし、資本主義は「誠実さ」に依拠した仕組みであり、不公平な取り扱いは経済成長に死をもたらすだろう。「不誠実さ」に依拠した仕組みなのに……。なんて能天気なコメンテーターなんだろう、と思っちゃうのです。(2008/09/16)

『資本主義は「誠実さ」に依拠した仕組みであり』。はて?そうなのですか。この点をもっと掘り下げて欲しいです。資本主義とは、旺盛な物欲を神の如くに崇拝して、物欲が命ずるままに他の価値観を切り捨てて、物欲全開で走ることを至上の価値観とする、一種の宗教みたいなものでしょう。いわば物欲獣が集まって互いに騙しつつ時には協力もして自分の儲けを最大化してゆく営みが資本主義ではないでしょうか。なので、上辺だけでも紳士ぶって誠実さを装わないと活動の枠組みが成り立たないのは分かりますが、誠実さに依拠した仕組みとまで言ってしまったら噴飯物ではないですか。(2008/09/16)

自分は米国でサブプライムロ-ン問題が浮上した時、当初は日本の金融関係者の発言の通りたいした問題にならないと思った。理由は、米国では住宅関連では過去に大きな問題(S&L?)があり、同じ徹を踏むことは無いと考えたからだ。然し、その後直ぐにその債券がファンドに組み込まれて一般に売られていると知ったとき、この事件の闇の底は深いのではないかと考えたものだ。月曜日にリ-マン・ブラザ-ス証券の破綻が報じられた。これで終わるだろうか。銀行に波及しなければ終わらないのでは。それも、米国の銀行だけでなく海外の銀行もだ。そうなると大恐慌だろう。米国は世界の経済をリ-ドしてきたが、今回の問題は「不誠実」を通り越して、勝手気ままな利己的行動によって世界を地獄の崖の上に立たせた悪魔の所業と言ってよい。問題の事業体を経営して高額の報酬を得ていた人間はどんな処罰を受けるのだろうか。熱く煮えたぎって地獄の釜の中に放り込まれ、苦しむ姿を、崖の上にいる人に見せると言うのだろうか。マスヤジ‘08.9(2008/09/16)

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三品 和広 神戸大学教授