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法案否決、それでも「市場原理主義」は生き残る

2008年9月30日(火)

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 最大7000億ドルに上る公的資金を投入する金融安定化法案が9月29日、米下院で否決された。一般大衆の税金を使って、「金持ちクラブ」とも言えるウォール街を救済する構図に納得できない政治家が予想以上に多かった。

ニューヨーク証券取引所のトレーダーたち

9月29日、米下院での金融安定化法案の採決を見守る、ニューヨーク証券取引所のトレーダーたち
© AP Images/Richard Drew

 別の理由もありそうだ。7000億ドルの投入によって、米国経済の心臓部であるウォール街が実質的に政府監視下に置かれる。民間セクターへの政府介入としては前代未聞の規模になるのだ。

 米国は自由放任主義を標榜し、市場経済に立脚した資本主義世界を過去1世紀にわたってリードしてきた。いわば市場原理主義の本家本元であり、過剰な政府介入は米国的な価値観と相いれない。この文脈で金融安定化法案の否決をとらえることも可能だ。

「自由放任」から「政府介入」

 欧州やアジアでは、政治家や経営者の多くがウォール街の崩壊を見て留飲を下げているようだ。無理もない。例えば1997年のアジア通貨危機の際、アジア各国で米国流市場原理主義に対する不満が噴出した。マレーシアのマハティール首相は「アジア的価値観」を唱え、米系ヘッジファンドを標的にした空売り規制の導入で株価を維持しようとした。

 空売りは将来の相場下落で利益を得ようとする取引であり、ヘッジファンドが多用する手法だ。米系ヘッジファンドは反発し、アジア流資本主義を「クローニーキャピタリズム(縁故資本主義)」と決めつけた。

 何とも皮肉なことである。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題をきっかけにした金融危機を受け、今度は米国が自国市場で空売り規制の導入を決めたのだ。大幅下落が続く金融株を対象に空売りを規制し、株価を維持しようと考えた結果だ。

 米国が「自由放任」から「政府介入」へカジを切り替えた影響は大きい。欧州やアジアの主要国が雪崩を打って空売り規制に乗り出した。あたかも世界中が「市場にすべてを任せるのは間違い」と言い、市場原理主義に反旗を翻しているようだ。

 しかし、今年の世界長者番付の首位に躍り出た著名投資家ウォーレン・バフェット氏は、市場原理主義の将来に賭けているようだ。

 2000年にピークを迎えたIT(情報技術)バブル期、バフェット氏は「ハイテクは分からない」として、ハイテク株にいっさい手を出さなかった。「市場原理主義の申し子」とも言える投資銀行を毛嫌いしていることでも有名だ。

ダウ平均株価は前週末比777.68ドル安と過去最大の下げ幅を記録した

金融安定化法案の否決を受け、ダウ平均株価は前週末比777.68ドル安と過去最大の下げ幅を記録
© AP Images/Richard Drew

 にもかかわらず、自ら経営する投資会社バークシャー・ハザウェイを通じて、「最強の投資銀行」ゴールドマン・サックスに最大100億ドル(1兆円以上)投じることを決めたのだ。ウォール街が大恐慌以来の危機に直面している真っ只中に、である。

 バフェット氏は米経済テレビ局に登場し、ゴールドマンへの出資について「頭脳を買った」とコメントした。ウォール街は、米国の競争力の源泉である知識集約型産業の典型だ。ゴールドマンが保有する人的資産の価値と比べて同社株があまりに割安になり、「割安株投資家」としての本能がうずいたようだ。

「政府は問題を解決してくれない。政府こそが問題だ」

 歴史を振り返ると、危機をきっかけに政府介入を一時的に強めることはあっても、米国が1世紀以上にわたって市場経済を信奉してきたことが分かる。

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