• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

結局、何も救えなかった米の利下げ

今や資本増強は欠かせない

  • 本多 秀俊

バックナンバー

2008年10月8日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 ここ数週間、金融市場は米金融機関救済策の成否を巡り大揺れに揺れている。バブル崩壊後の日本経済の長期低迷、いわゆる「失われた10年」との比較や、日本の不良債権処理の歴史をひもとく研究も、ここのところますます盛んだ。われわれは、「失われた10年」から何かを学び、その教訓を生かすことができているのだろうか?

 バブル崩壊後の日本経済と、米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題を震源地とした今般の世界経済の混乱とを比較した時、最初に驚かされるのは、後者の問題が発覚してから、まだ13カ月しかたっていないという事実だ。

 FRB(米連邦準備理事会)はこの間、矢継ぎ早の金融緩和を実施、世界各国の中央銀行と協調し、潤沢で広範な流動性供給策も導入してきた。FRBがここまで素早い対応に動くのも、日本の教訓が生かされた証拠と言えるのかもしれない。

 また、サブプライム問題露見後1カ月を経ない時点で、米財務省が、民間出資による不良資産買取ファンドの設立を後押ししたのも、日本からの教訓で、問題の処理が「時間との競争」であることを十分に理解していたからだろう。しかし、同ファンドの設立は結局頓挫した。さらに1年が経過、いくつもの金融機関の淘汰と再編を経てもなお、税金を投入した不良債権切り離しによる金融機関救済策を成立させることに労を要している。

 米国をはじめ世界は結局、日本の失敗から何も学んでいないのだろうか。

デフレ圧力に金融政策が機能しなかった日本

 サブプライム問題で、FRBの対応が素早かったのは疑いようもない事実だろう。日本の場合、景気浮揚のための金融緩和が後手に回り、下図の通り、気づいた時には「利下げ余地」が乏しく、強まるデフレ圧力に対し、金融政策が全く機能しない期間を長く経験した。

デフレへの道

 ここでは、実質金利の目安として、消費者物価と3カ月物銀行間金利の差を表している。実質金利がプラスであることは、簡潔に言えば「物の値上がりによる機会損失よりも、金利負担の方が大きい」状態を意味し、企業や個人の消費行動を抑制する効果をもたらす。

 例えば、今日、100万円で買える生産設備が、1年後に105万円に値上がりすると予想される時、100万円の借り入れ金利が3%で、1年後の返済額が103万円になる場合と、金利が8%で、返済額が108万円になる場合とでは、その設備を購入するか否かの判断には、大きな違いが生じるであろう。

 当然、1年後に103万円の負担で105万円の価値の物を保有できる方が、「今」の購入に踏み切りやすい。1年後の負担が108万円で、その物の価格が105万円であるなら、「(生産開始を1年先送りにしても)1年後に買って3万円節約した方が得かもしれない」という判断が働くからだ。

実質マイナス金利の状況作りを目指したFRB

 FRBが、昨年夏のサブプライム問題発覚、クレジット危機蔓延の初期段階から、積極的な利下げを繰り返してきたのも、こうした、日本の失敗を教訓とし、早めに「実質マイナス金利」の状況を作り出すことを目指してきたからであろう。

 図の右端部分は、サブプライム問題の露見前後からの米市場金利と実質金利の推移を示したものだが、相次ぐ米利下げが、実質金利を急速に押し下げ、2008年の年明け以降、実質マイナス金利の状況を作り出してきた状況が確認できる。

 FRBが日本の失敗を教訓として生かすことができたかどうかの評価は、今後の米国並びに世界経済の動向を追うことで、おのずと判断できるのではないか。また、興味深いことに、現在の局面では、景気の浮揚にこだわって迅速な金融緩和を実施したFRBと、物価の安定にこだわって頑ななまでに金融引き締めを維持したECB(欧州中央銀行)という、対照的な対応が同時代に観察されている。

コメント6

「Money Globe ― from London(本多 秀俊)」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック