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流動性供給は、資本増強につながらない

2008年10月9日(木)

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 FRB(米連邦準備理事会)、ECB(欧州中央銀行)を含む欧米の6つの中央銀行が、10月8日の日本時間午後8時に一斉に0.5%の緊急協調利下げを発表した。ドルの流動性供給に関する協調策は昨年12月以降何度も実施されている。

 しかし、政策金利変更の発表を6中央銀行がシンクロさせて行うことは歴史上初めてだろう。今週末には中央銀行総裁も集まるG7が予定されていた。G7を待てずに8日に6中央 銀行が緊急会議を開いて協調利下げを決定したということは、ここ数日の各国の金融システム危機がいかに連動しながら深刻さを増していたかを物語っている。

 最近の米国の金融市場は各所で激しい機能不全を起こしていた。その危機に対処するために、FRBのバランスシートが凄まじい勢いで膨張している。FRBが多方面に向けて大規模な資金供給策を取っているためだ。

 FRBの総資産は、いわゆる「パリバ・ショック」発生前の2007年8月8日から「リーマン・ショック」発生前の2008年9月10日にかけて、8%の増にとどまっていた。これは平時のペースとさほど変わりがない増加幅だ。

 しかし9月のリーマン・ブラザーズの破綻以降、状況は一変した。2008年10月1日時点のFRBの総資産は1兆4987億ドルであり、9月10日からわずか3週間で60%も拡大した。

 緊急経済安定化法の成立で、FRBによる準備預金への金利の付与が可能となったことで、今年末時点のFRBの資産規模は、2兆ドルを大きく上回る模様だ。今後の市場の混乱次第では3兆ドルに近づいていくかもしれない。世界の中央銀行が踏み込んだことのない規模まで、FRBは資産を膨らます可能性がある。

資産膨張のリスク

 その資産の拡大はリスクを多くはらんでいる。ドル紙幣の信認はFRBの資産の健全性によって担保されているだけに、FRBはタイトロープの上を進んでいくことになる。

■FRBのバランスシート(全地区連銀合計)

 現在のFRBのバランスシート(10月1日時点)を過去と比較しながら検証してみよう(表)。米国の金融市場がいかに深刻な状態に陥っているかが理解できると思われる。資産サイドから見てみる。

 米国債は昨年から今年9月10日にかけてFRBの保有が激減した。特に短期国債(Tビル)の減少が激しい。市場への資金供給増大に伴う超過準備の増加を食い止めるため、FRBはTビルを売却して資金吸収を行ってきた。

 安全資産である国債の保有額が減った一方、銀行向けの貸し出しであるTAF(ターム物入札方式貸し出し)、ディスカウントウィンドウ、証券会社向け貸し出しであるPDCFなどをFRBは増加させてきた。FRBは信用度が低い担保も受け入れながら、それらの貸し出しを行っている。TAFの実行残高は年末までに9000億ドルに増やされる。

 また、ABCP(資産担保コマーシャルペーパー)を担保にしたMMMF(マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド)向け融資、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)向け貸し出しも増加している。

 こうしてFRBの資産サイドを眺めてみると、異常な項目のオンパレードになっていることに改めて驚かされる。FRBは捨て身の救済策を拡大してきている。ドル紙幣の信認という観点で見ると、FRBのバランスシートに加わっている負荷を米政府・議会はいつまでも放置すべきではない。

銀行券がここ1カ月ほど奇妙に増加

 一方、負債サイドを見てみよう。

 最大の負債項目である銀行券(ドル紙幣)の発行残高が、ここ1カ月ほど奇妙に増加している。同残高の前年比は今年4月下旬に+0.6%まで低下した後、5月以降に反転上昇を示した。為替市場におけるドル安の加速が止まったこともあって、海外でドル紙幣からユーロ紙幣へシフトする動きが一段落したのだと思われる。

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「流動性供給は、資本増強につながらない」の著者

加藤 出

加藤 出(かとう・いずる)

東短リサーチ社長

1965年生まれ。88年4月東京短資入社。2013年より現職。国内外の短期金融市場の現場の視線から金融政策を分析している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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