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他人の資産に勝手に保険をかけた綻び

「金融版大量破壊兵器」を拡大させた米国

2008年10月20日(月)

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 デリバティブ(金融派生商品)は、金融版大量破壊兵器であり、今は表に出ないで隠されているが、潜在的に致命的な脅威である――。

 米著名投資家のウォーレン・バフェット氏がこんな表現を使ってデリバティブ市場の急拡大に警鐘を鳴らしたのは、今から5年以上前の2003年3月上旬である。イラク戦争が勃発する直前であったことから、イラクが隠し持っているとされた大量破壊兵器を比喩として使った。

 米国発の金融危機は、バフェット氏の懸念が的中して「金融版大量破壊兵器」が使用された結果でもある。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)が急拡大したのも、巨大金融機関の救済が不可避になったのも、デリバティブを抜きには語れない。

“大量破壊兵器”を持っていたから救われた?

 例えば、破綻の危機に直面した米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)。金融当局は投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻を黙認する一方で、AIGの救済に踏み切った。「なぜ」との疑問が当然のように広がったが、デリバティブの急成長分野クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に原因があった。

 AIGは業務多角化の一環として、一種の保険契約であるCDSを大規模に展開。契約残高はAIGだけで4500億ドル(45兆円)に上っていた。そのため、当局は「AIGが破綻すると、CDSを通じて無数に広がる取引相手に影響が及び、金融恐慌につながりかねない」と判断したのだ。

 CDSは、債務者の破綻など信用リスクを売買するデリバティブ取引のことだ。CDS市場では、ローンや社債の保有者である債権者が、利払い停止や元本回収不能などデフォルト(債務不履行)のリスクを回避するために、そのリスクを投資家へ転嫁する。保険契約を結ぶのと同じことだ。

 AIGはCDS市場では「保険の売り手」として目立った存在だった。

 「保険の買い手」である取引相手は、サブプライムローンを積極的に拡大してきた銀行になるはずだが、厳密には違う。銀行の多くはサブプライムローンをひとまとめにしたうえで証券化し、それを投資家へ転売することでリスクを回避していた。

リスクを転嫁できるのならば何も怖くない

 証券化されたサブプライムローンを購入した投資家は、債権者としてどうやってリスクを管理していたのか。CDSである。CDSという保険を買うことで、リスクをAIGなどの第三者へ転嫁していたのだ。第三者は「保険の売り手」としてリスクを引き受け、デフォルトの際には元本を補填しなければならない。

 リスクを転嫁できるのならば何も怖くない――。

 このような発想が広がったのを背景に、サブプライムローンのように銀行は信用力に劣る借り手にも積極的に融資し、住宅バブルを助長した。本来ならばリスクを回避する手段であるはずのデリバティブが、逆にリスクを助長する結果を招いてしまった。

 なぜなのか。様々な理由があるが、「他人の資産に保険をかける」行為が問題の根っこにあるようだ。

コメント5件コメント/レビュー

問題は他人の資産に保険をかけることではないでしょう。それは単純なオプションでも生命保険の再保険でも一緒で、これらがダメだというのはあまりに幼稚な議論です(たとえば、単純な金利オプションを否定した場合、まともな銀行は消費者に対し、住宅ローンの早期返済という利便性を提供できなくなります)。問題は、個別プレーヤーの観点からはリスクの分散だと思われていたことが、実は金融システム全体にとってはリスクの集中/増殖であったということではないでしょうか。集中というのは、例えばAIGのような一部のプレーヤーのブックにはどんどんエクスポージャーが積み上がってしまうということです。また、利用があまねく広がった状態でマーケットがパニックに陥ると、保有銘柄の分散という常識的なヘッジ手段にリスク分散効果がなくなり、一つの銘柄しか持っていないのと同じなってしまうというようなことです。増殖というのは、原資産の数倍にのぼる想定元本の取引が行われることにより、直接的なカウンターパーティー・リスクだけで数倍になっているということです。また、サブプライム・ローンのCDOなどに関して言われているように、ローンのオリジネーターが無責任に与信してしまうというモラル・ハザードもあるでしょう。今巷間で議論されているクリアリング・ハウス(決済機関)の設立というのは、後者のカウンターバーティ・リスクの増殖には一定の効果がありそうですが、結局リスクの集中に関しては問題を悪化させる可能性すらあるのではないかと危惧が残ります。市場参加者には、そうした機関へ十分な出資を求めることが必要かと思います。(2008/10/20)

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問題は他人の資産に保険をかけることではないでしょう。それは単純なオプションでも生命保険の再保険でも一緒で、これらがダメだというのはあまりに幼稚な議論です(たとえば、単純な金利オプションを否定した場合、まともな銀行は消費者に対し、住宅ローンの早期返済という利便性を提供できなくなります)。問題は、個別プレーヤーの観点からはリスクの分散だと思われていたことが、実は金融システム全体にとってはリスクの集中/増殖であったということではないでしょうか。集中というのは、例えばAIGのような一部のプレーヤーのブックにはどんどんエクスポージャーが積み上がってしまうということです。また、利用があまねく広がった状態でマーケットがパニックに陥ると、保有銘柄の分散という常識的なヘッジ手段にリスク分散効果がなくなり、一つの銘柄しか持っていないのと同じなってしまうというようなことです。増殖というのは、原資産の数倍にのぼる想定元本の取引が行われることにより、直接的なカウンターパーティー・リスクだけで数倍になっているということです。また、サブプライム・ローンのCDOなどに関して言われているように、ローンのオリジネーターが無責任に与信してしまうというモラル・ハザードもあるでしょう。今巷間で議論されているクリアリング・ハウス(決済機関)の設立というのは、後者のカウンターバーティ・リスクの増殖には一定の効果がありそうですが、結局リスクの集中に関しては問題を悪化させる可能性すらあるのではないかと危惧が残ります。市場参加者には、そうした機関へ十分な出資を求めることが必要かと思います。(2008/10/20)

CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)はデリバティブなのだから、現物の負債残高を上回ったところで何の不思議もありませんが?あなたの理論で行くと、世界中のあらゆる先物市場で、ショート(売り)ポジションを取る人間はとんでもない存在だ、ということですね。(2008/10/20)

 株に関心のない人々にとって、「サブプライム問題」は07年に初めて気付かされたことであろうが、それを前年以前に「予言」していた「エコノミスト」は少なくない。 にもかかわらず、そうした「予言者」が自慢できないのは、その見通しのほとんどが、数か月で収束するであろうという甘い読みとセットであったからである。 事ここに至っても、「金融工学」は発展であり、問題は「行き過ぎ」に過ぎないとする曲学阿世の輩が跋扈しているのはカジノ資本主義の属性でもあろうか。(2008/10/20)

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