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分断国家アメリカに未来はあるか?

忘れ去られた「融和」のメッセージ

  • 安井 明彦

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2008年10月24日(金)

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 いよいよ終盤戦を迎えた米国の大統領選挙では、両陣営間の応酬がヒートアップしている。

 最大の問題は何か──。金融危機、経済危機を目の前にした今、誰がどう考えても米国政治の方向性を変えていかなければならないというのに、民主党、共和党という2大政党が依拠する哲学の違いを乗り越えて融和を目指そうという機運があまりにも希薄なのである。選挙戦では両者の違いを浮き立たせなければいけないという事情はあるにしても、端で見ている方がもどかしくなるぐらい歩みが遅い。

 3回にわたって繰り広げられたテレビ討論会でも、両候補の口からは「根本的な違い」という言葉がしばしば飛び出した。確かに、両候補の経済政策には根本的な哲学の違いがある。カギとなるのは、経済における政府の役割の捉え方だ。民主党のバラク・オバマ候補は、政府の積極的な役割を評価する。一方の共和党のジョン・マケイン候補は、政府の役割を限定的に捉える傾向にある。

 こうした違いを鮮明に示しているのが、税制に関する提案である。

 オバマ候補は、税制による「富の再配分」を重視する。オバマ候補は、所得の上位5%には増税を行う一方で、中低所得層に対しては減税を実施する方針だ。

 マケイン候補は、税制の役割を経済成長の促進に求める。そのためには、所得税・法人税共に税率を低く保つべきだというのがマケイン候補の主張である。

 10月16日に行われた第3回テレビ討論会でマケイン候補は、オバマ候補が主張するように政府に富を分け与える役割を演じさせるのではなく、民間が富を生み出せるような環境を整えることが大切だと論じた。遊説先でオバマ候補が、「(税を通じて)富を分け与えるのは、すべての人にとって良いことだ」と述べていたのを意識した発言だ。

経済における政府の役割は拡大せざるを得ない

 もっとも、両候補の提示する「根本的な違い」に注目するだけでは、今回の選挙の意味合いは捉えきれない。見逃せないのは、どちらの候補が大統領になるにしても、米国の経済政策は曲がり角を迎えようとしているという視点である。

 第1に、米国が直面する課題に取り組もうとすれば、好むと好まざるにかかわらず経済における政府の役割拡大を余儀なくさせるということだ。本コラムの「オバマ旋風で「大きな政府」復権?」でも取り上げたように、1980年代以来の小さな政府路線は、限界に達しつつある。

 こうした事実を如実に示したのが、公的資金を投入した金融危機への対応である。小さな政府、規制緩和、自由放任主義を標榜してきた共和党政権が、結果的に何十兆円もの公的資金(税金)を投入している現状を見れば、その限界は誰の目にも明らかだろう。

 しかも、金融危機以前にも、地球温暖化問題や医療価格の高騰など、市場原理だけでは解決できない課題は山積していたのである。ローレンス・サマーズ元財務長官が指摘するように、新政権は「市場を(市場原理の行き過ぎによる)自家中毒から救うための政策」を模索せざるを得ない。

富裕層優遇から“普通の米国人”への配慮へ

 第2に、政策担当者は単に経済成長を促進するだけでなく、「普通の米国人の暮らしぶり」にも目を配る必要に迫られている。経済成長が続いている時点から、現状に対する米国民の不満は高かった。一般的な米国民には、好景気の実感が薄かったからだ。実質中位所得は伸び悩んでおり、2007年の時点でも前回の景気拡大期のピークには達しなかった。

 カリフォルニア大学のエマニュエル・サエズ教授によれば、ジョージ・W・ブッシュ政権下の2002~2006年の間に、所得上位1%の家計では実質平均所得が年率11%上昇したのに対し、それ以外(下位99%)の家計での伸び率は同0.9%にとどまった。

 こうした状況は、政府を通じた所得再配分を主張するオバマ候補に有利に働く。実際に、経済に焦点が集まるほど、オバマ候補が優勢になるというのが、最近の選挙戦の情勢である。民主党の予備選挙でクリントン上院議員の報道官を務めたハワード・ウォルフソン氏は、「(オバマ候補の勝利で)選挙の行方は決まった」と指摘し、その理由として政府の役割に関する世論の見方が大きく民主党寄りに傾いているとの見方を披露している。

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