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「予想PER」に頼る愚かさ

2008年11月17日(月)

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 米国発の金融危機を背景に世界的な株安連鎖が進行し、世界各国で「優良銘柄も激安」や「絶好の買いチャンス」といった表現もマスコミ紙面をにぎわすようになった。その際に頻繁に利用される指標がPER(株価収益率)だ。

 もともとは欧米で利用が広がったPERは、株価が1株利益の何倍かを示す指標だ。その意味を踏まえれば「株価利益倍率」と訳されるべきだが、日本ではなぜか「株価収益率」という表現が定着してしまった。

 もう1つ日本流に修正された部分がある。「PER」と言うと、ほぼ自動的に「予想PER」を意味するようになった点だ。つまり、PERの分母である1株利益が過去の実績値ではなく、予想値になっているのだ。

 長期のトレンドをたどれば、国全体の経済成長に歩調を合わせて、企業収益は昨年よりも今年、今年よりも来年の方が大きくなるのが普通だ。言い換えれば、過去の1株利益ではなく将来の1株利益を使うと、PERは低めになる。日本で「予想PER」が主流になったのは、株を売りたい証券会社の営業戦略がうまくいった結果かもしれない。

予想より実績重視の米国

 さて、米国ではどうか。予想PERはどちらかといえば参考程度であり、通常は過去1年の1株利益を分母にした実績PERが利用される。たとえば、人気投資サイト「ヤフー・ファイナンス」でも、個別企業の株価情報欄で予想PERは参考指標の扱いになっている。金融危機の真っただ中で収益予想が困難な時期だけに、なおさら予想PERは指標にしにくい。

 米主要500社を網羅するS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)500種株価指数は、過去1年で4割も下落している。その結果、同指数採用企業の予想PERは10倍、実績PERは15倍へ下がった。歴史的な平均である16倍を下回り、確かに割安感が出ている。

 ところが、「今後1年の利益予想が信頼できないのはもちろん、過去1年の実績も信用できない」との意見もある。年によって利益動向が大きく変わるため、1年分の数字だけに頼るのは危険、というわけだ。

 2000年に『根拠なき熱狂』(ダイヤモンド社)を出版し、IT(情報技術)バブルに警鐘を鳴らしたことで有名になったエール大学のロバート・シラー教授。同教授も実績重視派だ。「極端な」という形容詞をつけてもいいほどの、である。

実績を見るのは1年どころではなく10年

 PER算出に際してシラー教授が使う1株利益は、過去1年どころではない。過去10年である。過去10年の平均1株利益は、その間に利益成長が続いていたとすれば、過去1年の平均よりもずっと小さいはずだ。つまり、分母が小さい分だけPERが高めになり、割高感が出てくる。

 S&P500種ベースでは、過去10年平均を使った「10年PER」は直近で16倍。これは歴史的な平均値と同じだ。しかし、16倍という歴史的な平均値は好況時も不況時もすべて含めた平均値であり、深刻な経済危機時の平均値ではない。

 シラー教授は過去100年以上のPERデータを集めており、インターネット上に公開している。それによると、「10年PER」は1932年に6倍、1983年に7倍をつけている。前者は1929年のニューヨーク株暴落に端を発した大恐慌時、後者は第2次石油ショックの後遺症を引きずっていた時期である。

 今回の金融危機が最終的に、大恐慌や第2次石油ショックに匹敵する展開になるのかどうかは分からない。仮になるとすれば、6倍や7倍と比べる意味も出てくる。その場合、16倍はなお割高だ。

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