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アイルランド:
EU拡大の光に眩惑される“ケルトの虎”

  • スティーブ・モリヤマ

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2008年11月20日(木)

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 実は、今回で当連載を終了させていただきます。長い間ご愛読いただき、心よりお礼申し上げます。皆様のご支援もあり、本連載の「特別版 今、なぜ欧州なのか」を含め、今回で54回と、1年以上にわたる連載となりました。正直なところ、本業で出張が多く連載を続けることは、決して容易ではなかったのですが、少しでも時間があると書き連ね、お蔭様で何とかここまでやってこられました。

 最終回の国は、アイルランドを選びました。理由は、この国が小国ながら、筆者がライフワークとして考え続けている“拡大欧州”の光と影を見極めることに関して、最も参考になると考えているからです。また「今、なぜ欧州なのか」の稿で述べた「グローバルネットワーク社会」の重要性を、いち早く察知して実践躬行してきた国で、今後の欧州の拡大とグローバルネットワーク社会の深化を考えていくうえで、様々な示唆を与えてくれると確信したからです。


 農業国からハイテク産業国に変身を遂げたアイルランド。もともと欧州最貧国の1つに数えられ、18世紀、19世紀には数多くのアイルランド人が、米国をはじめ新天地に活路を求め、祖国を後にした。その結果、現在アイルランドの人口は430万人に対し、米国にはその10倍に近い4000万人ものアイランド系移民が住み、英語圏を中心に全世界には7000万人以上のアイルランド系移民がいると言われている。

 人口の減少は1922年に英国自治領として誕生(独立は37年)してからも、食い止めることはできなかった。現在のアイルランドの人口は、19世紀よりも少ないという、世界的にも珍しい“知られざる顔”を持つ。

 その後、73年にEU(欧州連合)の前身のEC(欧州共同体)に加盟した時も、政府債務などの面から欧州最貧国の1つに数えられ、国民の平均所得もEC平均をかなり下回っていた。80年代になっても、景気は回復せず、高失業率と高インフレの二重苦の中で、もがき苦しんでいた。

 ところが、90年代に入ると、アイルランドは驚くべき力強さで経済大国の階段を駆け上っていった。“ケルトの虎”と呼ばれ、97年から2007年の10年間のGDP(国内総生産)の平均成長率は7%を上回った。

 貧しい農業国からハイテクとサービス業の国に大変身を遂げた背景には、何があったのだろうか。

外資誘致で、英国一極集中を脱す

 まず、外資、特に米国企業の欧州進出の足がかりとして、投資庁がアイルランドの優位性を巧みに投資家に売り込んだ点が挙げられよう。製造業や金融業への優遇税制(10%の法人税率など)を導入し、現在、アイルランドにある製造工場の3分の2は米国系と言われるほど、“米国に優しい”投資環境を提供してきた。

 さらに、サービスセンターの誘致にも注力し、シェアード・サービス・センター(管理業務を欧州全体で一元管理する拠点)、コールセンター、研究開発センターなどの誘致に成功した。米国のIT(情報技術)関連企業や金融機関等から委託された開発業務や事務処理作業を、時差を利用して米国時間の深夜から朝にかけて行い、業務効率を高め米国企業の競争力強化に貢献してきたのである。

 その結果、1993年後半より著しい経済成長を遂げ、“ケルトの虎”と呼ばれるようになった。なお、法人税率については、その後、欧州委員会からの圧力があり、12.5%に引き上げられたが、それでもEU加盟国中最低水準にある。

 また、貿易の多角化、脱英国一極集中に成功したことも、成功要因の1つに数えられるだろう。第2次大戦時までの貿易相手国は基本的に英国で、しかも主要輸出品は農産物だった。当時、英国向け貿易額は、全体の8割を占めていたという。

 だが、近年、上述の外資誘致に成功するのと相まって、貿易相手の多角化にも成功し、英国の占める割合はわずか2割となった。そのほかのEU諸国や米国、中国などとの多面的な貿易関係を深めていった。さらに、労働力については、伝統的にアイルランドの教育水準は高く、しかも英語圏という強みもあり、企業のグローバル化の波にうまく乗ることができたとも言えよう。

不動産バブル崩壊とサブプライム

 この国は、もともと高失業率だった。しかし、近年は失業率が低下しており、しかも、2004年5月のEU拡大時に労働市場を開放した結果、ポーランド系をはじめとしたアイルランド人以外の労働者が、全労働者の1割以上を占めるに至った。

 ただし、アイルランドの国内消費を支えながら、経済成長を牽引してきた不動産価格の上昇は、一時期英国を上回るほどになったが、2006年には伸びが止まり、昨年からは下落している。これに伴い、経済成長を牽引してきた建設関連も大打撃を受け、しかも米国との緊密な関係故に、米国経済失速の波をもろに受けている。先般、ユーロ圏15カ国中で最初に不況突入を公式発表している。

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