「加藤出の日銀ウォッチ どこへ行く為替相場」

膨張続くFRBのバランスシートの先

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2008年12月4日(木)

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 今年9月に米リーマン・ブラザーズが破綻して以降、バランスシート(貸借対照表)が急膨張している中央銀行が増えている。グラフは、今年8月末近辺のバランスシートを100%として、その後の“リーマン・ショック”を経てどの程度の変化が起きたのかを表している。

 それによると英イングランド銀行とFRB(米連邦準備理事会)の膨張が凄まじく、それにECB(欧州中央銀行)が続いている。一方、日本銀行の変化は限定的である。

リーマン破綻以降、急膨張を見せる中央銀行の資産

 主要国のマネーマーケット(短期金融市場)の状況も概観してみよう。米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円における銀行間オーバーナイト取引の日々の平均金利と各国中央銀行の政策金利との乖離がグラフに表されている。オーバーナイト金利と政策金利が一致している時は、グラフ上では乖離ゼロ%と表示される。

米・欧・英・日:オーバーナイト平均金利と政策金利の乖離

 これを見ると、9月前半までは、各国ともオーバーナイト金利を通常通り操作することができていた。しかし、リーマン・ショック以降は、円を除く3通貨の金利はぐちゃぐちゃになっている。

 銀行間市場の資金の目詰まりが激しくなり、FRB、ECB、イングランド銀行は大量資金供給を行った。その結果、上述のようなバランスシートの拡大が生じた。

 上記の中央銀行3行は、オーバーナイト金利の誘導をあきらめ、企業や個人向け貸出金利に影響を与えやすい銀行間のターム物金利(3カ月物金利など)を沈静化することを優先してきている。

現地で感じた3つのこと

 先日、ニューヨーク、ワシントンDCを出張で回った。その際特に感じた点が3つある。

 第1に、マネーマーケットはほぼ壊れた状態が続いている。マネーマーケットは経済に血液(マネー)を流すための“心臓部”と見なすことができる。それが今年9月のリーマン・ブラザーズの破綻以降、事実上、鼓動を停止したような状態に陥っている。

 このため、他の経済の部分が壊死しないようにFRBは“人工心臓”を経済に取り付け、それを使って必死になってポンピングしている。表面的にはマネーが流れているように見えても、それはFRBの救済策に支えられている。FRBの資金供給額は増大し、その資産規模は急膨張した。

 第2に、金融機関、一般企業、家計の多くがデ・レバレッジを強いられている。資金繰り破綻を避けようと、バランスシートの縮小を進めざるを得ない経済主体が至る所にいる。FRBのバランスシートの膨張は、彼らのバランスシート縮小を肩代わりしているとも言えるのだ。

 第3に、基本的に楽観的な国民性のはずの米国人の多くが、経済に対する自信を失っている。ウォール街関係者がこんな会話を交わしていた。

 「自給自足の生活が必要かも。田舎に土地買って、準備を始めないと」
 「それならモンタナ辺りがいいと思うよ。俺は今の家を離れられないから、この間、警察に行って銃の登録をしてきた」

 2人とも単に自分の職を心配しているのではなく、米国自体の先行きを心配していた。こうした心理状態では、バラク・オバマ新大統領にすがりたくなる気持ちも理解できる。

ドル建て資産の逃避は起きていないが

 “ドリームチーム”と呼ばれる彼の経済主要メンバーが、経済危機対策及び雇用と税収を生み出す新産業育成策をどれだけ打ち出せるかが重要である。前者は莫大な財政赤字を、今後生み出していく。

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著者プロフィール

加藤 出(かとう・いずる)

東短リサーチ取締役
チーフエコノミスト

加藤 出1965年生まれ。88年4月東京短資入社。2002年2月より現職。国内外の短期金融市場の現場の視線から金融政策を分析している。主な著書に『日銀は死んだのか?』(日本経済新聞社)、『バーナンキのFRB』(共著、ダイヤモンド社) など。

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