「チャイナプライス」

チャイナプライス

2008年12月12日(金)

「中国の問題は、中国だけの問題ではない」

筆者 アレクサンドラ・ハーニーさんに聞く

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 高騰する人件費、禁止有害物質の混入発覚、成長率の鈍化――。今、中国「世界の工場」には、様々な逆風が吹きつけている。

 その様を、広大な国土の隅々にまで出かけ、2年にわたり丹念な取材を続けてきたのが、今連載の筆者であるアレクサンドラ・ハーニーさんだ。

 筆者の取材は今春『The China Price』として世界各国で発売され、この12月に邦訳版も発売されることになった。ハーニーさんはなぜ、世界の工場に興味を持ったのか。連載の締めくくりとして、筆者にその理由を聞いた。

(聞き手は日経ビジネス オンライン 真弓 重孝)


(最終ページに、ハーニーさんからの音声メッセージがあります。こちらも、お聞きください)


アレクサンドラ・ハーニーさん

(写真:菅野 勝男、以下同)

 ―― ハーニーさんが、中国に関わりを持ったきっかけは。

 アレクサンドラ・ハーニー 確か1999年か、2000年だったと思います、英国のFT(フィナンシャル・タイムズ)の記者時代に、広東省の広州にあるホンダの工場を取材する機会がありました。

 現地に行って、様々な衝撃を受けました。中国人もホンダと同じような工場を持っていたのです。日本はモノ作りで世界の先頭を走っていると思っていたのですが、その日本と同じような工場を中国人が経営していたことは、私にとってとてもショックでした。

 私は日本に興味があって、高校時代に日本語を習い、高校3年の時に初めて、日本に来ました。大学に入る前には、名古屋市の隣の尾張旭市に2カ月近く滞在しました。私が日本に興味を持ったのは、日本の製造業、モノ作りに魅力を感じたからです。

 ですから、FTに入社して東京支局に配属されて製造業の担当になったのは、私にとってはとてもラッキーでした。中国のホンダの工場に行ったのも、FTで日本の製造業を担当していた関係です。

 そのホンダの中国工場を見てから、これからはモノ作りでは日本よりも中国なのかもしれない、と思うようになりました。ホンダの工場を見た後、日本に戻ってからある財閥系の大手電機メーカーの人と話をする機会があり、その人が中国語を勉強していると教えてくれました。

 私が「なぜですか」と尋ねたら、「中国はこれから経済大国になるから」と言うのです。そう聞いて、私もこれからは中国語を勉強しないといけないと思い、中国に行こうと決めたのです。

 ―― それで実際に中国に行った。

 ハーニー FTでいったん東京支局からロンドンに赴任し、2003年にロンドンから香港支局に赴任しました。そして、確か2003年、2004年に、ホンダの工場のある広州に行きました。その時は自動車ではなく、セーターを作っている工場に行きました。

 すると、何百人もの女の子が座ってセーターを作る光景を目にしました。それを見て、彼女たちと話したくて、話したくて、たまらなくなりました。

 そしてある1人の娘に声を掛けたら、彼女の話にとても興味を引かれました。珠海からものすごく遠い田舎から2年前にやって来た娘で、寮では10人を超える娘たちと一緒の部屋に住んでいると教えてくれました。

 彼女は毎日朝から晩まで働き、収入のほとんどを田舎に送っている。それを聞いて、彼女が彼女の家族にとって、非常に大きな役割を果たしているのだと感じました。同時に、彼女は世界中の消費者にとっても、大きな存在なのだと。安い製品が世界中に供給されているのは、彼女みたいな娘がたくさんいるからなのだと思ったのです。

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著者プロフィール

アレクサンドラ・ハーニー

アレクサンドラ・ハーニー 日本語、中国語が堪能な香港在住の米国人ノンフィクション作家。1997年、米プリンストン大学卒業後、東京大学留学など経て、98年に英FT(フィナンシャル・タイムズ)入社。FT在職の9年間では、日本で自動車など主に製造業をカバーする。FT在職中に休暇を取り、2年ほどかけて中国本土で工場経営の実態を調査する。その後、FTを退社、中国での調査成果は『THE CHINA PRICE』(The Penguin Press)としてまとめ、2008年春から世界各国で発表され始めた。邦訳版は日経BP社から2008年12月15日に邦題『中国貧困絶望工場』として発売の予定。

(写真:菅野 勝男)


このコラムについて

チャイナプライス

原材料費高騰、賃上げ、人民元高、そして安全問題。「世界の工場」として君臨してきた中国の製造現場に次々と試練が押し寄せている。世界中を席巻してきた「チャイナプライス」の行方はいかに。日本の製造業にも通じたジャーナリストが、2年ほどかけて中国本土で行った調査を基にリポートする。

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