「豊島 信彦の早耳・聞耳 亜細亜マーケット」

台頭するインドネシア、沈むタイ、次を狙うベトナム

変化する東南アジア勢力図

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2008年12月16日(火)

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 タイで12月中旬に開催される予定だった東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が政情混乱により延期された。これに伴い12月5日、インドネシア外務省は、首脳会議に次いで重要なASEAN外相会議を15〜18日にインドネシアのジャカルタで開催すると発表した。

 外相会議ではASEAN憲章が承認される予定のほか、次期首脳会議の開催スケジュールなどが協議される。シンガポールなどは金融危機の影響がASEANに波及する中で必要以上に遅らせるべきでないと首脳会議の1〜2月開催を求めている。

 これだけの動きを見ると、ASEANが毎年末に開催している最高会議が、今年の持ち回り議長国のタイで政局混乱から開催がおぼつかず、これに見かねてASEANの事務局を担当するインドネシアが手を差し伸べた、という自然な流れのように思われる。しかし、背景にはこの10年で政情が安定するとともに経済改革が軌道に乗り、ASEANで発言力を増したインドネシアの自信の表れと、その一方で、地域経済の盟主を誇ってきたタイに対する信用の失墜がうかがえる。

■ ASEAN10カ国の概要 (名目GDP順)

国名 人口・万人 国土面積・
万平方キロ
名目GDP・
億ドル
実質GDP成長率・
外貨準備高・
億ドル
インドネシア 22494 189 4329 6.3 550
タイ 6574 51 2457 4.8 852
マレーシア 2684 33 1865 6.3 1010
シンガポール 459 0.07 1613 7.7 1630
フィリピン 8871 30 1441 7.3 302
ベトナム 8559 33 700 8.5 236
ミャンマー 5764 68 135 5.5
ブルネイ 39 6 124 0.4 7
カンボジア 1434 18 86 9.6 18
ラオス 614 24 40 7.5 5

(データ)日本アセアンセンター。数字は2007年暦年ないし2007年末。

ASEAN+6

 ASEANは2007年に結成40周年を迎え、想定を上回るペースで経済の一体化を目指す動きだ。当初は2020年を目指していた「政治・安全保障」「経済」「社会・文化」の3つの共同体を2015年に繰り上げて実現しようとしている。

 今回の外相会議はその基本法とも言うべきASEAN憲章を承認、行動計画が採択される重要な場となる。これで、「ASEANは新たに生まれ変わり、地域共同体の建設に取りかかる」(ジャカルタ・ポスト紙)。今やASEANは「より効果的で結束力のある組織へ変革を遂げようとしている」(日本アセアンセンター)。

 特に、経済共同体としては自動車、エレクトロニクス、農産品など11の重点セクターについて2010年内に統合が予定されており、他の2分野に先行している。経済組織としてのASEANの力は大きい。10の加盟国だけでなくASEAN +3(日・中・韓)さらに印・豪・ニュージーランドを含むASEAN +6の経済連携が期待されるからだ。

 日本はシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピンと2国間EPA(経済連携協定)を発効、ベトナムとも年明け早々の発効が想定されている。これとは別に、日本は日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)をシンガポール、ベトナム、ミャンマー、ラオスとの間で12月1日に発効させた。このAJCEPは日本が2国間協定を締結していないベトナム、ミャンマーなどを補完、輸入額や品目数の85〜90%以上で関税を撤廃していくことになる。

変わるインドネシア

 最近、中国が人件費の上昇や人民元高などでモノづくりの拠点としての競争力を後退させている中で、ASEANへの求心力は、ますます高まる方向にある。すでに、日本企業の間でこれを見越した動きが出ている。大手繊維会社のシキボウ3109はタイやインドネシアで作った原糸を、ベトナムで織布、縫製する拠点を建設しようとしている。AJCEPのメリットを期待してのことという。

 日本はASEANとの関係構築で他国より先行している。さらにインドとのEPA交渉も大詰めを迎えており、ASEAN+6という大きな自由貿易圏が視野に入ってきた。

 そうした台頭するASEANの中で、インドネシアの存在感が増している。かつてはスハルト大統領(1968〜98年)のもとで華人クローニー(取り巻き)や一部官僚による少数支配でケタはずれの汚職がまん延、その高コスト経済が1997年のアジア通貨危機で大きな打撃を受けた。

 98年の実質GDP(国内総生産)はなんと13.1%のマイナスを記録した。しかし、昨年は6.3%と11年ぶりの高成長を記録。IMF(国際通貨基金)の10月時点での予測によると、2008年は6.1%、2009年も世界的なリセッションの懸念が広がる中、5.5%の高い成長が見込まれている。2009年の政府見通しは5.5〜6.0%である。

 何が変わったのか?

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著者プロフィール

豊島 信彦(とよしま・のぶひこ)

豊島 信彦 (株)BRICsプラス11経済研究所 所長
クレディスイス、モルガン・スタンレーなど欧米の銀行、証券会社で証券アナリストとして長年活躍。2008年12月より現職。10年以上の経験を誇る中国株分析のほか、BRICsなど新興国の株式分析で定評。著書に『やさしいタイ株』(インデックス・コミュニケーションズ)など。豊島氏は2009年4月23日に永眠致しました。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。



このコラムについて

豊島 信彦の早耳・聞耳 亜細亜マーケット

成長著しいアジアには、世界中のカネが集まりつつある。金融投資の対象として魅力を帯びてきたこの地域に潜むチャンスとリスクは――。証券アナリストとして長年、アジアをウォッチしてきた筆者が、独自の情報網と視点で紹介していく。

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