「インドの魅力&魔力 投資編」

海外資本逃避で分かった実力と課題

バックナンバー

2009年1月13日(火)

1/2ページ

印刷ページ

 「年の終わりというのは、終わりでも、新たな始まりでもなく、時の流れが続いているだけだ。ただ、知恵と経験を我々に授けていくが」―― ハル・ボーランド。

 米国人の作家でジャーナリストのボーランドの言葉のように、昨年爆発した世界的な金融不安が今年も続くことだろう。多くの投資家は昨年で事態に区切りをつけ、今年は次の地固めの年にしたいと願っているはずだ。

(この1年で変わったこと)
  2008年1月 09年1月(1/5)
海外石油市況(WTI) 93.2ドル/バレル 46.4ドル/バレル
インドのインフレ率 4.3% 6.4%
外国投資家のインド株投資 2440億ドル 750億ドル
(残高)
MSCI世界株価指数 4.0% -38.7%
(過去1年の騰落率)
インド株SENSEX指数 49.1% -50.3%
(同)

 だが今年もサブプライムの余波は何らかの形で続き、我々はその流れの中で様々な試練を受けていくだろう。年明け早々、悲観的に過ぎるのかもしれないが、ボーランドの後の言葉を借りれば、我々がこれから受ける試練は一昨年から昨年にかけて得た経験と知識を使うことで、これまでよりはうまく乗り越えていけるかもしれない。

海外資本で支えられていたインド経済の実力を再認識

 インドの株式市場も今回の金融危機で大きな影響を受けている。振り返ってみると、インド市場は2004年に転換点を迎えている。

 2004年には、それまでの低調な生産活動の反動、企業リストラの効果、それに金利低下が相まって、相場は急激な上昇を見せた。インド企業の収益は1997年から2003年までは停滞が続いていた。しかし、2004年からは人口増という構造的な要因と投資の拡大で、新たなビジネスサイクルに入った。

 そうした上昇サイクルもいずれは一巡するものだ。ここにきて金融引き締めと信用収縮を背景に、企業業績はスローダウンしている。米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題に関しては、インド企業は直接関与していなかったが、このグローバリゼーションの時代にあっては、影響なしとは言えない。

 米国が風邪を引けば、インドはくしゃみをする。ここにきて資本流入に陰りが見られる。インドは経常赤字で、これまでの成長は海外資本によって支えられてきた、ということを改めて認識させられた。

 この半年ほどの間に、世界的な信用収縮がそうした資本輸入の重要さを気づかせてくれた。さらに、貿易赤字が2008年7〜9月に386億ドルに広がり、経常赤字の増加ペースが加速している。この18カ月の暗い経済環境の中で何か光明は見られないのだろうか。

原油価格の下落は追い風に

 期待される動きとしては、景気スローダウンの初期の頃と違って、中央銀行であるインド準備銀行(RBI)と政府の考えが一致していることだ。また、原油価格がピークから1バレル当たり80〜90ドル下落していることも、輸入原油に頼るインド経済には朗報だ。

 石油だけでなく多くの1次産品も輸入に頼るインドは、今後、貿易収支が改善に向かおう。さらに期待されることとして、向こう2年のうちに、例えばインドの財閥リライアンス・グループによるベンガル湾での天然ガス開発、石油企業のカイン・エネルギーによるインド北西部ラジャスタン州での石油開発が軌道に乗るだろう。

 また、米国との協定で核燃料の調達が進み、原発利用も進もう。加えて、公務員の給与改革が想定されていることもある。こうしたことが積み重なると、2010年にはGDP(国内総生産)を0.75〜1%押し上げる効果があると見られる。

インドの経済指標と国債利回り

インドの経常収支・貿易収支

流動性は1年前に比べ改善

 機関投資家の中には、現在の経常収支が悪化の途をたどっていると懸念を抱く向きがある。おそらく、2008年10〜12月は過去最悪に近い数字となっただろう。

 しかし、それを悲観し過ぎる必要はない。海外資金の流出は一巡しつつあり、インドの外貨準備の潤沢さを考えると、流動性は1年前と比べて改善しているはずだ。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。



関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
この記事を…
内容は…
コメント0件受付中
トラックバック
著者プロフィール

マニッシュ・バンダリ
(Manish Bhandari)氏

マニッシュ・バンダリ オランダ系INGグループの運用会社、INGインベスト・マネジメント(インド)のファンドマネージャー。国際公認投資アナリスト(CIIA:Certified International Investment Analyst)。1999年インド国際ビジネス大学(金融工学)卒、同博士課程終了。前職はHFDC証券アナリストで、証券業界に通算8年在籍。趣味は読書、旅行、コイン収集。菜食主義の厳格なジャイナ教教徒



このコラムについて

インドの魅力&魔力 投資編

10%近い成長を続けるインド。2050年にはGDP(国内総生産)で日本を抜き、世界5位に躍り出ると予測されている。次の可能性を求めて海外からのマネーが流入するインドの実際を現地のファンド・マナージャーがリポートする。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン