FOMC(米連邦公開市場委員会)が公開した昨年12月の議事録によれば、FOMC委員が、これまでに比べてインフレ率が下がりすぎることに対する懸念を急激に高めていることが分かる。FRB(米連邦準備理事会)は今後、信用収縮に加え、デフレと戦わねばならないという難しい金融政策の舵取りを迫られることになろう。
消費者物価指数(CPI)は2008年11月時点で前年比1%の上昇の水準にまで低下した(図)。1月16日に公表予定の12月分消費者物価指数は、5カ月連続で前月より低い水準になる見込みで、そうなれば1940年代以来の出来事となる。同時に2008年の水準は前年比でもマイナスになり、これも1950年代以来の伸びになる見込みだ。

直感的にはこのインフレ率の低下は原油・商品価格の急落が原因であるように見える。もし昨年夏までの商品価格の高騰が単に投機的なもので、それの剥落で数字上インフレ率が低下しているのであれば、むしろ歓迎すべきことにも見える。しかし、米国経済は、もっと経済全体の悪化に根ざしたデフレスパイラルの状況に陥りつつある。
消費支出価格は上昇も、経済全体のインフレ率は低下
次の図は、米国のGDP(国内総生産)統計から2つのインフレ指数を取り出して見たものである。個人消費支出価格指数は消費者の購入する財・サービスの価格の変化を表す消費者インフレ率、GDPデフレーターは企業部門なども含めた経済全体の財・サービス価格のインフレ率である。

2007年ころから消費者インフレ率はほぼ一貫して上昇基調にあるのに対し、GDPデフレーターは2006年以降、ほぼ一貫して低下している。これは、消費者が購入するガソリンや食料品などの価格が、消費者インフレを押し上げているものの、企業の生産設備や住宅・建物などの資産を含めた経済全体のインフレ率はこれに逆行して下がっていることを表している。
つまり、世の中全体のモノ・サービスの価格の上昇率は、実は2006年頃に景気が減速を始めて以来、継続的に低下している。ただ原油や商品価格の上昇で数字上インフレが進行しているように見えただけなのだ。
買い控えが顕著に
仮に原油や商品価格が今後安定しても、物価が下がり続ける兆候の1つに、消費者や企業の買い控え行動がある。
2008年の年末商戦は、予想通り歴史的な不振に終わった。そこで目立った消費者行動の1つは、商戦が始まっても消費者が買い物を進めず、小売店がさらに値引きをするのを待つ行動にでてきたことである。
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1964年生まれ。87年旧三菱銀行入行。90年から国際資金為替部で為替ディーリング、94年からロンドン支店ディーリングルームで単一通貨導入などに携わった後、99年から資金証券部で資金・証券決済制度改革担当・円金利トレーディングチーフを務める。2005年2月から現職。著書に『電子コマーシャルペーパーのすべて』(共著、2004年東洋経済新報社)。







